指先で測る血中酸素濃度は95%前後の値を指した。数値は常時監視されており、大きく下がるとアラートが鳴る。

カーテンで仕切られたブースはほぼ2メートル四方。出るのは禁じられた。買い物は看護師に伝え買ってきてもらう。シーツ類の交換は無し。家族の面会も不可だ。

高熱と頭痛は変わらなかった。初日は40.7度、翌日も40.2度。歯を食いしばって夜明けを待った。

40度台の発熱は未経験だった。まぶたを閉じると、視界が暗くなるのではなく、鮮やかな見知らぬ世界が広がった。特効薬がなく、対症療法で症状が落ち着くのを待つほかない。

入院3日目、熱が引き始めた。解熱剤なしでも3日続けて発熱がないことを確認し退院となるまで、9日間を病院で過ごした。

途中、保健所から「『L452R』の変異型への感染が確認された」と知らされた。デルタ型にみられる変異だ。市中での広がりを身をもって実感させられた。妻と息子はPCR検査で陰性だった。

医療従事者の負担も重い。常に防護服にゴーグルなどでの対応を迫られる。

感染源ははっきりしなかったが、マスクと手洗いを欠かさない、会合や人混みは避けるなど、基本的な感染防護の重要性を痛感した。「ワクチンも1回打った。そろそろ飲みにいってもいいか」。そんな感覚で感染したとしたら、その後に待っている事態がもたらすマイナスは、まったく割に合わない可能性がある。

◇  ◇  ◇

あらゆる世代に感染リスク

東京都は15日のモニタリング会議で、変異ウイルスが広がっている影響から、4週間後の8月11日には1週間平均の1日あたりの新規感染者が2400人を超えるとの見通しを示した。

14日時点の病床使用率は34%で、2023人が入院している。

国立感染症研究所の分析では、都内ではすでに49%が感染力の強いインド型(デルタ型)に置き換わり、8月下旬にはほぼ全て置き換わるとされる。

都内では6月以降、感染者の9割を50代以下が占め、若年層の感染が拡大している。7月6日~12日の新規感染者のうち40代は18.3%、20代は30.9%に上った。

専門家は「あらゆる世代に感染リスクがあるという意識をより強く持つよう啓発する必要がある」と訴える。

(山本有洋)

[日本経済新聞夕刊2021年7月21日付]

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