2021/7/19

日本の体外受精は女性が連日通院するのが一般的で、自己注射はあまり普及していない。治療方針や費用も医療機関によりまちまちで、成功率などのデータも基準が不明確なために、どこを受診していいのか分からない人も多いという。

日本での体外受精による出生率は世界でも極端に低く、原因として晩産化や自然周期法の採用に加え、第三者の卵子提供や代理出産が認められていないこともある。海外では精子・卵子バンク、卵子凍結など妊娠・出産の多様な選択肢が普及している国も多い。このように他の国で一般化していることを日本でも積極的に検討すべきだ。保険適用だけでは、日本での不妊治療は進まないだろう。

不妊治療をしても子どもができない人たち、あるいはそもそも子どもを持ちたくないと考えている人たちの気持ちにも寄り添える社会を目指すことも重要だ。女性は子どもを産まないと社会に貢献していないかのような発言をする人もいるが言語道断である。

児玉治美
アジア開発銀行(ADB)駐日代表。国際基督教大学修士課程修了。国際協力NGOジョイセフにて東京本部やバハマに勤務した後、2001年から国連人口基金のニューヨーク本部に勤務。08年からADBマニラ本部に勤務。19年5月から現職。途上国の子どもを支援するプラン・インターナショナル・ジャパン評議員。

[日本経済新聞朝刊2021年7月19日付]