学んだのはターゲティングの重要性だ。代理店との会話、日本人が集まる会合、インターネットなどで積極的に車や半導体市場の変化をつかみ、営業機会を探した。4年間の海外生活は慣れるのに3年ほどかかったという。「月並みな言い方だが、スキルや働き方の幅を広げる大きな経験になった」
18年に帰国した後は海外営業部で欧州の代理店サポートに携わっている。営業では個人の力量や関係づくりを重視しがちなアジア圏に対し、「欧州は契約社会で長期的な経営体力を求める。品質や信頼の基準をクリアしないと相手にされない」。親会社の日清紡HDはブレーキの摩擦材で欧州の車メーカーと取引実績があり、「信用面で助かっている」と話す。
最近は新型コロナウイルス禍で渡航が制限されており、デジタルマーケティングを強化している。ただ、オンライン上の会議や展示会でも「性能はいいし値段も安い、だが売れないという経験は星の数ほどしている。現場の人間が常にアンテナを張って商機をつかまえる必要がある」。
池本さんは「営業ノウハウは経験でしか分からない面がある。ネット上に転がっているわけではないから」と気を引き締める。
新日本無線は22年1月、同じ日清紡HD傘下のリコー電子デバイス(大阪府池田市)との統合を控える。「統合シナジーで製品開発力などさらに良い方向に進んでいくはず。顧客とともに成長し続けたい」と新体制下でも、営業の腕を振るう心構えだ。
(石川雄輝)
いけもと・あつし
09年に新日本無線入社。電子部品の営業として関東の大手取引先を担当、14年からシンガポール販社で主に東南アジア地域担当。帰国後は電子デバイス事業部海外営業部に。東京都出身。
09年に新日本無線入社。電子部品の営業として関東の大手取引先を担当、14年からシンガポール販社で主に東南アジア地域担当。帰国後は電子デバイス事業部海外営業部に。東京都出身。
[日経産業新聞 2021年7月14日付]