グーグル日本法人、面接官は将来の同僚

――新卒で応募できる職種は何ですか。

グーグル日本法人人事部採用担当 玉木尚宏氏

「新卒・中途にかかわらず、グーグルは職種や役割ごとに必要な要件やスキルを定義している。実務経験がなくても任せられると判断した役割に対しては、新卒でも候補者を探す仕組みだ。採用する職種はその年の求人状況によって異なる」

「新卒はポテンシャル採用の側面があるものの、入社後に力を発揮する優秀な人材はいる。学生も潜在能力だけではなくスキルも見ている」

「グーグル日本法人は2006年から新卒採用とインターンシップを始めた。引き続き新卒に力を入れていきたい」

――長期インターンシップがあると聞きました。

「インターンシップは通常夏に実施している。エンジニア職での募集が多い。正社員と同様に週に5日働き、実際に近い仕事をやってもらう。期間は最低8週間で、給料も支払う。実際に採用につながることもある」

――面接選考の仕組みは。

「面接は現場で働くチームが仲間探しをする場と位置づけている。学生にとって面接官は将来の同僚となる人だ。採用基準を満たし、チームメートとして共に働きたいと思う人を採用している」

「面接は1回あたり45分~1時間で、面接官と1対1で対話してもらう。平均3~4回実施し、学生が本質的にどういう考えを持っているのか掘り下げる」

「評価は属人的な判断を避けるため『構造的面接』を取り入れた。質問や評価方法を統一することで、面接する社員の無意識な思い込みや直感を排除する狙いがある」

――23年卒の学生がグーグル日本法人に入社するために今やるべきことは何でしょうか。

「選考で見ているのは組織の中でやるべきことを発見して実行するリーダーシップ、理解したり情報をまとめたりする認知能力、協調性を重視するグーグルらしさ、プログラミングなど職種で必要な知識の4つだ」

「部活動の主将をした、といった経歴上の情報は気にしていない。自分自身と向き合って、興味のある分野に熱中することが大事だ」

――新卒採用の選考で落ちた学生は将来グーグルに転職できますか。

「もちろんできる。重視しているのは選考時にグーグルが求めるスキルや能力を持っているかだ。一旦は不採用でも、数年後にご縁があるかもしれない」

能力が高い人が集まるGAFA

21年卒でグーグル日本法人のインターンシップに参加した女性は「実力やスキル、コミュニケーション能力があれば若手でも重要な仕事を任せてもらえる、最先端の会社だと思った」と振り返る。

ただ、女性は総合商社に入社した。「グーグルは高いスキルを持った人たちが集まっているので、社内で人を育てるインセンティブがあまりないのだと感じた。自分の能力不足を実感したこともあり、新卒で入りたいとは思わなかった。日本企業の年功序列は好きではないが、私は会社の中で学びながら成長したいと思った」と話す。

新卒採用は終身雇用や年功序列など、日本の雇用慣行と密接に関係する。企業が長期的に安定した労働力を得るかわりに、社員は安定した給料と教育、成長機会を得てきた。採用も効率的だ。

ただ、実務経験のない学生の一括採用はリスクにもなる。成長できずに会社に依存してしまう社員が出てしまう可能性もあるためだ。社員には転勤や希望した仕事に就けないことに対する恐れもある。

取材した2社は「キャリアは社員一人ひとりのもの」と口をそろえた。職種別採用で、必要な能力を持った人材をコストをかけて見極める。異動や転職は社員の自主性を尊重し、適材適所を目指す。GAFAの新卒採用への進出は日本の雇用環境を変える可能性がある。

(矢崎日子)

[日経産業新聞 2021年7月7日付]

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