テレワーク時代のマネジメント 管理職は必要なのか?

コロナ禍によるテレワークの普及以前から管理職の役割や存在意義は問題となっていた。
コロナ禍によるテレワークの普及以前から管理職の役割や存在意義は問題となっていた。

毎日出社し、お互いのプライベートも熟知し、家族のように組織の中で支え合う。そうした日本的な社員の日常を壊したのが新型コロナウイルス感染症だ。テレワークの推進により突如、部下は「見えなく」なり、「飲みニケーション」も途絶えた。会議や決裁など、日々の業務もどんどんデジタル化が進んでいる。急激に押し寄せる職場のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の波にとまどう人々への指南書が相次いでいる。

『テレワーク時代のマネジメントの教科書』(高橋豊著、ダイヤモンド社、2021年4月)は、副題で「『見えない部下』をどう管理するのか?」と問題提起する。仕事におけるビジョンもミッションも共有せず、何となく近くにいるから仲が良い。そんな結びつきはもろいものだ。今、「テレワークで部下が掌握できなくなった」と感じている管理職がいたとしたら、それは物理的な距離のせいではなく、もともと部下のことが「見えていなかった」のではないだろうか。

テレワークが普及する中でクローズアップされる管理職の役割や存在意義。実は新型コロナ前から度々、労務管理におけるテーマとして浮上していた。深層学習の進化によるAI(人工知能)の可能性が注目された第3次AIブーム以降、人間よりも公平に部下を管理できるという「AI管理職」が登場、物議を醸した。

もちろん、完全にAIが社員を管理する時代は、来るとしてもまだ先だろう。だが少なくとも「AIを怖がる管理職は生き残れない」と主張するのが『管理職はいらない』(野口竜司著、SB新書、同5月)だ。裏を返せば、AIの特性を理解しビジネスに活用したり、社内に導入したりという意思決定は「人」にしかできず、そこに活路もある。

IT(情報技術)プラットフォームを介した自由な働き方が広がる一方、個人事業主の法的保護のあり方の刷新も迫られている。

技術がもたらす労働法上の問題を、17年から先取りしていた解説書が『AI時代の働き方と法』(大内伸哉著、弘文堂)だ。著者は神戸大学大学院の教授で、21年4月には『人事労働法』(弘文堂)も出版した。「見えなくなった」部下を管理する上での注意点は何か。一定時間、情報通信機器を接続しなくてよい「つながらない権利」の保護など、法令面からアップデートできる。

働き方が変われば、権利や義務も進化する。寄り添ってくれる一冊を見つけたい。

(編集委員 瀬川奈都子)

[日本経済新聞2021年6月26日付]

テレワーク時代のマネジメントの教科書 「見えない部下」をどう管理するのか?

著者 : 高橋 豊
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 2,200 円(税込み)

管理職はいらない AI時代のシン・キャリア (SB新書)

著者 : 野口竜司
出版 : SBクリエイティブ
価格 : 990 円(税込み)

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