豊漁のブリをカツに 函館の新定番、バーガーや丼物で
地球温暖化の影響か、この10年ほどブリが北海道でも豊漁だ。ブリは刺し身、煮物など様々な料理でおいしく食べられる万能選手だが、北海道では新顔。地元消費を増やすため、水揚げが多い函館の料理人らが揚げて味付けした「ブリたれカツ」を開発した。
五稜郭駅(函館市)近く、国道5号沿いの広場「ハコニワ」には週末、たこ焼き、ラーメンなどを出すキッチンカーが集まる。12~13日はブリたれカツバーガーも加わり、1日70個が完売した。
バーガーは3種類。レギュラー(450円)のほか、タルタルと鬼おろし(各500円)がある。主役である揚げたてのブリは身のうまみを味わえ、タルタルソースや粗い大根おろしと一緒に頬張ると、食感に奥行きが広がる。
美食の街・函館生まれだけあって、ただのフィッシュバーガーではない。ブリは昆布エキスで味を深め、さらに赤カブ千枚漬けやブリだしを使ったゴボウのきんぴらをアクセントにしている。
レギュラーの香味たれは、しょうゆに大葉、ショウガ、ネギを加えている。タルタルには西京味噌やしば漬けを、鬼おろしにはブリの骨からだしをとった甘辛だれやキャベツ、カリカリ梅を入れている。
ブリたれカツの味をしっかり支えられるようにと、函館近隣の木古内町にある人気パン店コッペん道土(どっと)のパンで挟んでいる。
ブリたれカツは2020年、水産物の消費拡大や海について知ってもらうため活動する「はこだて海の教室実行委員会」が呼び掛けて提案されたブリ料理の一つだ。
函館の繁華街・五稜郭地区にある「菊川」の菊池隆大さんと、「輝なり」の白戸光さんが試作を重ねて考案。「下ごしらえに牛乳を使うことで、臭みが抜け、パサつかずふっくらした食感に仕上がる」(菊池さん)
函館市内を中心に同年10月に開催された「ブリフェス」の参加各店で初めて提供された。フェスに参加した居酒屋などの来店客だけでなく、家族連れや若者にもブリ料理のおいしさを知ってもらおうと、21年5月からバーガーの移動販売を始めた。
函館市内では昨年のブリフェス以降、ブリ料理を出す店が増えた。函館などを管轄する北海道渡島総合振興局内の「おしま食堂」ではブリたれカツ丼をメニューとしている。
新型コロナウイルス禍で「函館に食べに行くのはもう少し先に」という人には、薫製などお取り寄せができるブリ製品もある。函館市ふるさと納税の返礼品は焼き魚用ブリ切り身セットもあり、巣ごもり消費で選ぶ人が多い。
北海道の資料によると、2010年に2169トンだった道内のブリ漁獲量は11年以降は7000~1万2000トン台に増加。農林水産省の漁業・養殖業生産統計20年版では、ヒラマサやカンパチを含む「ぶり類」全体では、北海道の漁獲量は1万5300トンで全国首位だ。
鮮魚卸のマルヒラ川村水産(函館市)によると、道産ブリの旬は夏~秋で首都圏や関西でも評価が高まっている。一方、総務省家計調査で主要都市の1世帯当たりのブリ購入量・金額で札幌市は最下位に近く、地元消費の拡大が課題だ。
(函館支局長 伊藤政光)
[日本経済新聞夕刊2021年6月24日付]
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