33歳で子会社トップ M&A時の人材配置経験から教訓
武田薬品工業 クリストフ・ウェバー社長(下)
休暇を利用しながらアジア諸国を旅行し文化に触れた(フィリピン・マヨン山)
1999年末、33歳のときに英スミスクライン・ビーチャム(現グラクソ・スミス・クライン、GSK)のスイス子会社のトップになりました。フランス西部のエリアマネジャーになったときと同じく、自ら手を挙げてポジションをつかみとりました。スイスは多様な文化が混ざり合う土地。ドイツ語を学習するなど異文化に対応できました。
部下は100人ほどでしたが、フランスでセールス部門だけを束ねた仕事とは異なり、会社のトップとしてマーケティング、財務、法務など様々な機能を見る立場です。政府との交渉も経験しました。部下の話に耳を傾けながら、戦略の策定を進めました。
最も印象に残っているのが、2000年に起きたスミスクラインと英グラクソ・ウエルカムとの大型合併です。スミスクライン側のスイス子会社トップとして、グラクソ側の現地法人との統合を進めました。社員は統合に不安を感じていました。時間をかけるべきではないと考え、労働組合とも交渉をしながら迅速に統合作業を進めました。
ただ、うまくいかなかったこともあります。この時の統合は「1+1=2」というスキーム。同じ規模の製薬企業が対等な立場で統合するという内容です。マネジャーの数も、両社にそれぞれ割り当てられました。そのため、能力のある人材を適切なポジションに配置できませんでした。
この統合から学んだことは、同規模の企業を買収する際には、どちらかが他方を迎え入れる形にすべきだということです。人材もポジションを機械的に割り当てるのではなく、個人の能力を評価して公平に配置することが重要です。