書き出しで引き込まれた『坂の上の雲』 日本製紙社長日本製紙社長 野沢徹氏

のざわ・とおる 1959年神奈川県生まれ。81年慶大法卒、十條製紙(現日本製紙)入社。2005年財務部長。14年取締役兼執行役員企画本部長。19年より現職。
のざわ・とおる 1959年神奈川県生まれ。81年慶大法卒、十條製紙(現日本製紙)入社。2005年財務部長。14年取締役兼執行役員企画本部長。19年より現職。
これはと思う本は繰り返し読む。

座右の書は司馬遼太郎の代表作の一つ『坂の上の雲』です。近代国家として歩み出した日本が苦労して日露戦争に勝利するまでを描いています。

陸海軍の戦いを通じて、組織をどのように動かすのか。前線から、司令部、政府に至る各段階の人たちは、様々な状況の中で、どう判断して動いたのか。こうした観点で読むと非常に面白い。

20代で初めて読んだ時は「まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている」という書き出しが印象的で引き込まれました。30代になると課長代理、課長と役職がつき、40代ではさらに部長代理へと職責が上がります。改めて読むたびに、今の自分に照らして、こういう場合にはこんな行動がいいのかと、受け止め方は変わりました。

反面教師も登場します。例えば二〇三高地を攻めた乃木希典大将についた伊地知幸介参謀長です。最前線に出ずに後方で立てる作戦がことごとく失敗します。満州軍総参謀長の児玉源太郎大将が業を煮やして乗り出すくだりは、なるほどと思いました。

『人を動かす』も20代ですごく感銘を受けた本です。財務部では、金融機関の人と話す機会があって、どのように接したらいいのか、教科書のように読みました。でも社長になって再読したら、それほどでもなかった。いろいろ経験を積んだからでしょうか。

本業の洋紙は需要が減少傾向で、現在、事業構造改革の最中である。

入社以来33年、経理、財務畑だったのですが、いきなり執行役員企画本部長として経営企画をやれと言われて戸惑いました。その時に読んだのが、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)の著書『魂の経営』です。

「車が売れなくなった自動車メーカーはどうなるのか。我々は、まさにそうした事態、本業消失の危機に直面していた」と書いています。デジタルカメラの普及で、写真フィルムの需要は激減しました。洋紙の需要減少が顕著になったころでしたので、だいぶ参考にさせてもらいました。

富士フイルムは、培ってきた基礎技術を見直して、その延長線上にある新しい事業を拡大して危機を切り抜けたのです。これをヒントに、我々も本社の全役員が出席する委員会を設けて、眠っている基礎技術から有望なものを掘り起こし、即決で新製品を開発する態勢をつくりました。

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