2021/6/21

家事・育児負担が女性に偏っていることは、出生率に悪影響を及ぼす。米ノースウエスタン大のドゥプケ教授らは欧州19カ国のデータを用い、出産に対する夫婦の意識を分析した。

妻が子育てに前向きになれる環境づくりを

その結果、夫は子どもを持ちたいと思っているものの妻が同意しないために、新たに子どもをもうけない夫婦が多いことがわかった。さらに詳しく調べると、こうした夫婦では妻に育児負担が集中していた。新たに子どもを持つとさらに自分に負担がかかることを見越し、妻は子どもを持ちたくないと考えているのだ。

これまでの少子化対策をめぐる議論は、夫婦全体としての子育て負担をどう減らすかという点に集中し、夫婦間でどう負担が分担されているのかという視点が欠けていた。夫が前向きでも妻が後ろ向き、という夫婦が多いのならば、妻が前向きになれる環境を築くことが鍵になる。効果的な少子化対策のためには、ここに狙いを定めるべきだ。

具体的には待機児童の解消や学童保育の充実が挙げられる。夫が育児・家事に参加する機会を増やすための施策も必要だ。男性の育休、育児のための時短勤務、テレワークなどのワークライフバランス改善策も推進せねばならない。男性を家庭に返すことは、最善の少子化対策でもあるのだ。

山口慎太郎
 東京大学経済学研究科教授。内閣府・男女共同参画会議議員も務める。慶応義塾大学商学部卒、米ウィスコンシン大学経済学博士号(PhD)取得。カナダ・マクマスター大学准教授などを経て、2019年より現職。専門は労働市場を分析する「労働経済学」と、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」。著書『「家族の幸せ」の経済学』で第41回サントリー学芸賞受賞。近著に『子育て支援の経済学』。

[日本経済新聞朝刊2021年6月21日付]