「営業はモノを売ることをベースにしがちだが、限界がある」と植木さんは考える。モノではなく「価値」を売る。ジェネスタのような素材では、自社の開発部隊だけでなく、顧客の生産・開発メンバーも巻き込み、両社が持つ力を掛け合わせて新たな価値のある製品を生み出す。これこそが営業の醍醐味だと実感している。

17年から、米国やドイツなど9カ国11カ所にあるジェネスタの販売拠点を統括する。現地採用が多く、多様な考えや経験を持つ人材と目標や志を共有するため、新型コロナ以前は年100日ほどを海外で過ごしてきた。「結局は現場の人がすべて。エネルギッシュな組織づくりに力を注いでいる」。現在もウェブ会議を通じて各地のメンバーとの連携を維持する日々だ。

粘り強い性格は小学校から大学まで続けた野球で培われた。野球では何万回も練習したプレーが試合で一度も起きないことはある。「無駄かもしれないが、1回のチャンスのために練習を続けるのは苦ではなかった」と話す。

クラレの企業ステートメントに「世のため人のため、他人のやれないことをやる」というフレーズがある。かつては「世の中のためというが、商品が売れなかったら意味がない」と冷めた見方をしたこともあった。

ただ、今は違う。「営業とは感謝のかたまりだ」と断言する。社内では「サポートありがとう」、顧客には「クラレを信じてくれてありがとう」、部下にも「取り組んでくれてありがとう」。「いろんな感謝が集まって、売れて、それがまた感謝を集める。きれい事かもしれないが、最近本当にそう思う」

家に帰れば3児の父だ。やりがいを感じて働く姿をみて、「子どもたちは父ちゃんみたいになりたいと言ってくれる」と顔をほころばせる。クラレを今以上に世界で通用するブランドへ。植木さんの決意は固まっている。

(石川雄輝)

うえき・まさかず
02年クラレ入社、子会社のクラレメディカル配属。09年にクラレのジェネスタ事業部へ異動。17年にマネジャー昇格。19年からグループリーダーとして既存製品の販売拡大と市場開拓を担う。大阪府出身。

[日経産業新聞 2021年6月9日付]


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