妻は同じ会社の正社員だが「これまで『料理は妻がやること』と思いこんでいた」など、家庭内でも「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」があったことに気づいたという。育休を通して「見えていなかった世界が見えるようになった。社会貢献につながる仕事にも役立てられそうだ」と吉沢さんは話す。

正社員同士の夫婦でも、家事・育児は「主に妻」

日本は先進国の中でも、男性の家事・育児参加が少なく、少子化の要因にも指摘されている。政府が男性育休の取得推進を掲げるのは、そんな状況の打開のためでもある。

調査では、家庭での家事・育児分担についても聞いた。すると正社員同士の共働き夫婦でも、主な担い手は女性だった。食事の準備や掃除洗濯など10項目の家事について担い手を尋ねたところ、9項目で「主に妻」が「主に夫」「夫と妻半々」を上回った。

子どもの世話をする損保ジャパンの吉沢さん

家事・育児の負担が仕事に与える影響はどうか。「家事・育児のために仕事を調整した経験があるか」という質問に対し「大いにある」と答えた女性は50.8%で、男性の16.8%を大きく上回った。女性の「大いにある」「ややある」を合計すると84%にのぼった。内容は「育休を取得」が65.2%で最多。「仕事を休んで学校行事に参加」(63.6%)、「子供の看病のために休暇取得や早退をした」(63.3%)、「時短勤務を選択」(51.0%)と続いた。

男性の「大いにある」「ややある」合計は55.8%。内容は「仕事を休んで学校行事に参加」(58.4%)が最多で、次が「フルタイムだが残業を抑制」(44.8%)だった。

また女性の21.6%が「家事や育児との両立のため、やりたい仕事を断念・制限している」と回答した。男性は10.6%だった。「家事や育児が理由で与えられる仕事が限られている」と答えたのも、男性3.8%に対して、女性は15.6%と約4倍だった。

女性の47%「女性が家事・育児のためにキャリア抑制、仕方ない」

一方で「女性が家事・育児のためにキャリアを抑制するのは仕方がないと思うか」という問いに「とてもそう思う」と答えた女性は10.2%で男性の回答6.4%を上回った。「やや思う」も女性37.4%と、男性25.4%より多かった。企業コンサルティングのアパショナータ代表のパク・スックチャさんは「女性に一歩下がって振る舞うことを求める社会規範に、女性自身があわせている」と指摘。時短勤務や育休の長期化といった従来の制度拡充は「母親が家事・育児を担うという性別役割分業の考えを前提にしており、結果として女性の負担を助長させた」と分析する。

足元では新型コロナウイルス禍が少子化を加速させている。歯止めをかけるためには男女ともに子育てしやすい環境づくりが欠かせない。法改正を機に、男性も女性も家事・育児の分担への意識を変えていく必要がありそうだ。

■柔軟な家事・育児の分担 夫婦の話し合い必要
 厚生労働省の調べでは、2019年度の男性の育休取得率は7.48%と、他の先進国に大きく後れをとる。NPO法人コヂカラ・ニッポンの川島高之代表は「過去20~30年間日本が成長できなかった理由は、家事や育児の経験のないおじさんが決定権を持ち、売れるものを作れなかったから」と指摘。仕事のためにも「男性は家事・育児をやった方が得だ」と説く。
 大事なのはそれぞれの家庭ごとに、柔軟に家事・育児を分担しあえるようにすることだ。今回の調査で女性自身にも無意識の偏見があることが分かった。「仕方がない」とあきらめず、夫婦で話し合っていく姿勢が必要だと感じた。
(高橋里奈)

[日本経済新聞朝刊2021年6月7日付]