入社して初めて担当した「スケバン刑事」がいい例です。制服姿のかれんな不良少女が事件の解決に挑み視聴者をひきつけました。役者の魅力を引き出すのもドラマの役割です。高級ブランドの服ではなく、知的な印象を与える白衣こそ、沢口さんの新鮮な魅力を引き出せると思いました。

とはいえ、科学捜査で白衣といっても、医者なのか学者なのか。思い悩んでいたころ、京都府警科学捜査研究所を訪ねました。そこは試験管や実験器具が無造作に並び、まるで高校の理科室のような場所でした。

目にとまったのが銀色に光るジュラルミンのケースです。捜査に必要な鑑定グッズを詰め込み事件現場に持っていくケースでした。その時、沢口さんがジュラルミンのケースを抱え、さっそうと現場に現れる場面が思い浮かびました。

ドラマの一場面を細部にわたるまでイメージできるか。物語の代名詞になるような場面を生み出すことがプロデューサーの仕事の醍醐味だと気が付きました。

あのころ……

90年代後半はバブル崩壊とともに、若い男女の恋愛をテーマにした「トレンディードラマ」からの脱却が進んだ。その代わりに増えたのが、比較的幅広い層を狙えるミステリードラマだった。「科捜研の女」は99年の放送開始以来、高視聴率を維持し、今年9月に初めて映画化される。

てづか・おさむ 1983年(昭58年)青山学院大文卒、東映入社。10年執行役員、12年取締役、16年常務取締役、テレビ事業部門担当。千葉県出身。

[日本経済新聞朝刊 2021年6月2日付]


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