逆張りの「科捜研の女」 プロデューサーの醍醐味実感
東映 手塚治・社長(上)
沢口靖子さん(左)のストイックな仕事ぶりに刺激を受けた
■時代劇の象徴の撮影所で現代劇を撮る。
「京都で現代劇を撮れ」。入社して16年たった1999年、そんな指令が下りてきました。長い歴史を持ち、東映の時代劇の象徴である東映京都撮影所で、チーフプロデューサーとして現代劇を撮れというのです。長らくテレビ朝日の木曜夜8時の枠は時代劇でしたが、視聴率の低迷で変革を迫られたのです。
数人のチームが組まれアイデア出しが始まりました。既に、東京の撮影所で制作した「はぐれ刑事純情派」が人気を博していました。当時、1話完結型の事件ものが高視聴率を得ており、定番の事件ものでありながら全く新しいドラマができないか、知恵を絞りました。そこで生まれたのが「科捜研の女」でした。
■「情ではなく理論」で細部を作り込む。
「はぐれ刑事純情派」は男性刑事が拳銃などを使わずに犯罪の裏に隠れた心理に迫ります。人情を描くのは視聴者の共感を誘う定石ですが、新しさを打ち出したい。人情ではなく理論、男性ではなく女性が主役という逆張りを考えました。
科学捜査をテーマにしようと思い付いたきっかけは「科学捜査(秘)犯罪ファイル」という1冊の本です。指紋や声紋などを使った科学捜査の解説が書いてありました。現場に残る証拠の分析方法の多様性に驚き、これを物語にできれば面白くなると直感しました。
■「美しいものは汚す」のが東映のDNA、沢口靖子さんに白衣。
その頃、女優の沢口靖子さんが主演を引き受けてくれそうだという話がありました。そこで「美しいものは汚す」という東映のDNAを思い出しました。