2021/5/31

帝国データバンクによれば、20年4月までの1年間で社長に就任した女性の63%は「創業」によるものだ。だが、就業構造基本調査によると起業者に占める女性の割合は19.3%(17年)にとどまる。

マスターカードが発表した「女性起業家のビジネス進出ランキング(2020)」では、日本は58カ国・地域中47位と低い。リポートは、日本の社会が個性や創造性を評価しないために女性の能力が抑圧されていると分析。一方で世界全体としてはニュージーランドのアーダーン首相やドイツのメルケル首相などを例に挙げ、コロナ禍で女性のリーダーシップが重要になっており、女性のエンパワーメントが危機からの回復には基礎となると指摘する。

デル・テクノロジーズによる女性起業家都市ランキング調査では、日本は資金調達やロールモデルへのアクセスのしやすさという点で海外に比べ遅れているという。リーマン・ショック後の経済回復において女性起業家への投資が5%以下にとどまったことを問題視し、10年以降は世界各地で女性起業家をサポートするイベントを開催している。

現在、オンラインのコミュニティーでは7万人が活動。日本からも100人が参加する。同社では今年、ビジネスアドバイザーや投資家とのコネクションを提供するイベントを開く予定だ。

国内でも女性起業家に積極投資するVCは多い。政府も25年に女性起業家比率30%以上を目指して「女性、若者/シニア起業家支援資金」などによる資金支援を進める。

シェアオフィスの米CICは昨年、アジア初の拠点を東京・虎ノ門に開いた。環境エネルギーなどに加え、女性の悩みを技術で解決するフェムテックやビューティーテックなど主に6分野でビジネスイベントを定期開催するほか、VCで働く女性と起業家を結びつける場を設けている。

CICジャパンの梅沢高明会長は「日本の産業競争力を高めるにはスタートアップの幅を広げる必要がある。女性や外国人が入ることでアイデアが広がり、海外からの注目も高くなる」と強調する。

■需要創出 起爆剤に期待
 経済産業省が2016年にまとめた「女性起業家等実態調査」によれば、09年からの5年間で「趣味や特技を生かしたかった」という起業動機は減り、「事業経営という仕事に興味があった」「社会の役に立つ仕事がしたい」が増えた。リポートには、女性起業家は従来の業界慣習や固定観念を打ち破り需要を生み出す起爆剤としての可能性を秘めている、と記されている。取材をして、この傾向は強まっていると感じた。
 女性ならではの不安も当然ある。abaの宇井CEOは第2子妊娠の際「トップが事業にフルコミットできなくなる時期が生じれば、資金調達は困難になる」と懸念したが、投資家は祝福し、変わらず応援してくれたという。支える側も固定観念を打ち破ることで、起爆剤は作用するのだろう。
(中村奈都子)

[日本経済新聞朝刊2021年5月31日付]