台頭する女性起業家 テック利用、社会課題に挑む

2021/5/31

女性起業家の台頭が目立ってきた。これまでは「生活者目線のアイデア」に光が当たっていたが、社会課題に対する意識が高まるにつれ、身近な問題をテクノロジーと組み合わせる課題解決型のビジネスに関心が集まるようになった。海外と比べ日本の女性起業家は少ないものの、コロナ禍で女性のリーダーシップへの信頼が上がったこともあり、テック企業やベンチャーキャピタル(VC)などが積極的な支援に乗り出している。

インターネット関連のショーケースは3月8日の国際女性デーに初めて、投資家などが参加するオンラインピッチイベントに女性起業家ばかりを招いた。過去のイベントを通じて起業家に女性が圧倒的に少ないのを問題と感じていたことや、森喜朗元首相による女性蔑視発言が世間の関心を集めたことなどが理由だ。社会解決型の事業であるかなどを基準に4社を選んだ。

要介護者の排せつを匂いで検知するセンサーパッドを開発したabaの宇井吉美CEO

その一つ、aba(千葉県船橋市)が開発するのは要介護者の排せつを匂いで検知するセンサーパッド。宇井吉美CEOは中学生のときに祖母が病気になり、家族介護者となった。家族の負担は大きく「人だけで人を救うには限界がある」と感じ、千葉工業大学の未来ロボティクス学科に進学した。介護実習でスタッフから「おむつを開けずに中をみたい」と言われ、センサーの開発に取り組んだ。

介護現場では決まった時間におむつを開けて確認し、排せつしていなければそのまま閉じる。逆に短時間に複数回の排せつがあれば漏れ出してシーツ交換が必要だ。排せつのタイミングで交換できれば介護者の負担は減らせる。

在学中の2011年に起業し、週末は介護現場で働いて現場の声を拾った。介護者にも要介護者にも使いやすいようベッドに敷く形状にし、19年に製品化した。製品開発の知見と介護業界のネットワークを生かし、今後はケアテック事業に参入する企業と協業して事業の拡大を目指す。

オングリットホールディングス(福岡市)の森川春菜社長が起業したのは、シングルマザーになった友人が就職に困っていると聞いたからだ。当時、ゼネコンに勤める夫からは人手不足を聞いていた。

両者を結びつけることで問題を解決できないか。森川社長は橋のひび割れなどカメラで構造物の損傷箇所を撮り、AI(人工知能)で自動図面化。人の手で補うことで作成時間を短縮する「マルッと図面化」を開発した。

シングルマザーだけでなく日本語が不自由な留学生や障害者に仕事を依頼してきた。全国には橋だけでも約70万ある。老朽化が進む中で構造物点検のニーズは高く、一方で技術者不足から効率化が求められている。道路照明などにも対象を広げている。