コロナ禍で露呈 女性と就業「M字カーブ解消」の虚実

2021/5/24

女性の就業率が子育て期に著しく下がる「M字カーブ」。近年解消し、女性の活躍が進んだといわれてきた。だが新型コロナウイルス禍はそれがいかにもろいものだったかを露呈させた。多くの非正規雇用の女性が失業し、再就職をあきらめる人も目立つ。背景には主婦を非正規にとどめる社会構造や、能力開発をなおざりにしてきた企業の姿勢がある。

主婦ら、失業後に再就職あきらめ

兵庫県の40代の女性は4月末、2年半勤めた大手外食チェーンの製造工場のパートを辞めた。コロナ禍の影響で断続的な休業や配置転換が続き、心身の疲労がつのった。今は夫の収入で暮らしながら、子育てと家事に専念する。

「家計を考えると専業主婦のままではいられない」。だが希望する調理補助の働き口がない。介護や医療の求人は未経験可だが、感染リスクがある。「コロナが収まるまでは無職でいる」つもりだ。

総務省が4月に発表した2020年度平均の就業者数をみると、非正規の女性雇用者は前年度比で65万人減った。非正規男性の32万人減に比べ、2倍以上の落ち込みだ。宿泊や飲食、小売りといった女性の割合が高い業種が、営業時間短縮などのあおりを受けたことが響いた。

「今回、特徴的なのはコロナの影響で職を失ったり、仕事を辞めたりした後に、自ら就業を抑制する女性が多い点だ」と日本女子大の周燕飛教授は指摘する。20年11月に周教授が関わった調査では、解雇や離職後に就労も求職活動もしていない、いわゆる「非労働力化」した女性の割合は21.6%と男性(7.4%)の3倍にのぼった。足元の労働力調査の結果でも今年1~3月、就業も求職活動もしていない人のうち、就業を希望しない女性は前年同期から32万人増えた。

コロナの感染リスクを避けるために家庭にとどまる人もいるが、再就職をあきらめる背景には女性の労働市場のいびつさもある。

小学2年生の子どもを持つ茨城県の女性(40)は、アパレル事務職のパートを昨年5月に辞めた。「パートには在宅勤務制度がなく、休校中の子どもの面倒をみるためにやむをえず」と話す。

その後、テレワーク可能な仕事を探してみたが、ほぼ正社員の求人だ。「子どもがいるので残業できないし、いつまた休校になるか分からない。特別なスキルもなく、採用される気がしない」と、今は職探しをやめている。

M字カーブ解消・・・実情は非正規中心の雇用

 「M字カーブは解消した」。そんな言葉が聞かれたのは19年、女性の就業者数が3000万人を突破した頃だ。それまで、子育て期に女性がいったん仕事を離れ就業率がガクンと下がる「M字カーブ」が、日本で女性の労働参加が進んでいない象徴とされてきた。

だが政府は13年から女性活躍を掲げて就労を促進。子育てしながら働く女性が増えたことなどにより、カーブは緩やかになり台形に近づいた。アベノミクスは女性の雇用で成果をあげた、と評された。

次のページ
スキル高まらず、職探し困難に