2021/5/17

4日間連続で1人の課長に密着し、可能な限り業務を代行する。新任マネジャー研修も事前に受講して、マネジメントの基礎を学び、23人の女性社員が課長になってみた。

橋本直子さん(41)もその一人。役職は現在も課長だが、部下はいない。2人の小学生を育てるワーキングマザーだ。「同期の男性は部下を持つ課長に就き始めているが、子育てと管理職の両立ができるか、不安があった」と話す。

東京郊外で営業支社長を体験。複数の代理店・顧客を支社長と訪問し、販売戦略を提案した。「販売目標は妥当か、日程はタイトすぎないか。どこかに無理があれば代理店に負荷がかかり、目先の販売目標は達成しても中長期的に販売が滞る恐れもある。全体を俯瞰(ふかん)する見方を学んだ」

子育てとの両立でも光明がみえた。支社長代行として5人の部下と人事面談する中で、管理職は仕事を1人で抱え込まずとも、部下に上手に権限委譲すれば部署を回せると気づいた。「ワーキングマザーも管理職になれる」

重責に見合うやりがい体感 「やってみたい」に意識変化

23人は「マネチャレ!」前、全員が管理職になりたくないと考えていた。だが、挑戦後に22人は「なってみたい」と変化した。1人ではなし得ない仕事ができ、部下の成長に寄り添える。重責に見合うやりがいを体感したからだ。

「マネチャレ!」は男性管理職の意識も変えた。「無理させてはかわいそう」と遠慮して、責任が伴う難しい仕事は男性部下に割り振る傾向が社内にはみられた。だが4日間女性社員を付きっ切りで指導した男性課長は、彼女らの仕事への意欲を知り、今までの姿勢を見直したという。

総合営業第二部の遠藤学課長は別の気づきも得た。「チームをグイグイ引っ張るのが理想の管理職だと思っていた」。だが受け入れた女性社員は部下の仕事上の悩みを聞き出し、それを基に個々の意見を引き出す会議の運営法を提案してくれた。「寄り添うリーダーシップなら、女性も抵抗なく管理職に就ける」

昇進意欲、企業風土が醸成
多くの企業で女性社員は昇進・昇格意欲に乏しいといわれている。その責は女性側にあると思われがちだが、企業風土の影響も見過ごせない。「マネチャレ!」を主導した東京企業第一本部の宇都宮重忠部長は「年次を重ねれば管理職に自然と就くと思っている男性社員と違い、女性社員は自分が管理職になった姿を入社以来、思い描く機会がない。自分事として考える機会があれば女性の意識も自然に変わる」と指摘する。
 女性管理職の少なさは日本企業に共通する課題だ。とはいえ無理な抜てきはあつれきも生む。女性が自然と昇進・昇格する風土をどう醸成するか。実体験に勝る学習機会はない。
(編集委員 石塚由紀夫)

[日本経済新聞朝刊2021年5月17日付]