スタートアップ就活の企業選び 「社長力」で見極め

イラスト=太田美菜子
イラスト=太田美菜子

スタートアップ企業が新卒の採用手法を多様化している。大手企業のブランド力に負けずに就活生に接触するため、自社の魅力の伝え方に工夫を重ねている。スタートアップ企業の情報が手に入りやすくなる一方で、歴史の浅い企業に就職しても大丈夫か不安に思う就活生も多い。今後も成長するスタートアップ企業の見極め方も含めて実情を探った。

採用支援会社RECCOO(東京・渋谷)は2020年11~12月に、22年卒の学生2034人を対象にスタートアップと大手企業のどちらを志望するかを調査した。その結果、大手志望が55.3%(前学年比12.9ポイント増)だったのに対して、スタートアップ志望は4.7%(同9.2ポイント減)にとどまった。

「新型コロナウイルスの流行による社会不安から、企業の安定性を重視する学生が増えた」(RECCOO)と分析する。知名度の低いスタートアップ企業はインターンで学生を引きつけていた。ところが就活がオンライン主体になったことで、魅力をアピールできなくなったという要因もあるとみる。

「会社を成長させる今後の計画を教えてください」「社風は厳しいですか」。4月に東京・品川で開催された、学生が直接スタートアップ企業の経営者と話せるイベント「リクルートオーディション」の光景だ。約60人の就活生が参加し、質問を投げかけた。

跡見学園女子大学に通う4年生の就活生は、若手から裁量権を持って働けるスタートアップ企業に魅力を感じ、イベントに参加した。一方で、創業から間もない企業は「10年後まで安心して働けるのか不安だ」と話す。社長の話を聞いて将来性を判断する。

参加した個別指導塾テスティー(東京・杉並)は創業15年にして、初の大学新卒採用に乗り出した。同社の繁田和貴社長は「学生がスタートアップ企業への就職に不安を覚えるのは当たり前」だと考える。事業が伸び悩んだ際には「自分の報酬をなげうって従業員の雇用を守る」と話す。社長だからこそ伝えられる覚悟を示して学生の不安を取り除く。

イベントを開催したプレシャスパートナーズ(東京・新宿)の高崎誠司社長は、学生が就職するスタートアップ企業を選ぶ際には「社長のビジョンがしっかりしているかを見極めること」が大事だと語る。「スタートアップ企業は『社長力=企業力』だ。3~5年後のビジョンを聞くなど、社長と直接話して成長する企業かどうか判断してほしい」と訴える。

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