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評価額6億円 福井高専、AI×打音で老朽インフラ点検

高専DCON観戦記(上)

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NIKKEI STYLE

「企業評価額は(これまでの)記録超え、6億円です」。4月17日、東京都内。高専生を対象にしたアイデアコンテスト「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2021」(高専DCON)の表彰式で、司会者による最優秀賞のチームの発表に会場がどよめいた。高専生の持つ技術とディープラーニングを組み合わせ、新たなビジネスモデルを競う高専DCON。その奮闘の模様を2回に分けて紹介する。

「プレ大会、第1回と素晴らしいアイデアが出てきて着実に成果が出ている。今年も楽しみにしたい」。実行委員長で東京大学大学院の松尾豊教授はこう冒頭であいさつし、DCONは開幕した。出場メンバーの中にはプレ大会から3年連続して本選まで歩んできた学生の姿もあった。

DCONは日本ディープラーニング協会が主催。出場高専は5分間のプレゼンテーションの後、5人の著名なベンチャー・キャピタリストから質問を受ける。事業の見通しや市場、技術についての厳しい質問が飛ぶ。最優秀チームには起業資金として100万円が贈られる。

新型コロナウイルス対策のため、20年に続いて今回も、高専と東京の会場をリモートで結んでの開催となった。事実上の無観客とはいえ、協賛企業などの関係者は会場の壇上にある大きなスクリーンが映し出す高専生の奮闘ぶりを真剣に見守っていた。

冒頭の松尾氏の期待通り、高専生たちによって練られた優秀なプランが続々と発表され、その中で最優秀賞を受賞したのは、福井工業高等専門学校のプログラミング研究会。打音検査によるインフラ設備の点検システム「D-ON」を開発した。企業評価額は6億円で、前回大会の最優秀賞の5億円を上回った。

そのプレゼンは見事だった。

「経営理念」という言葉、起業に意欲

「私たちの経営理念は、全ての老朽化から人の命を守ることです」。すでに「経営」という言葉を使い、起業への意欲もうかがえた。

D-ONはトンネルや建物などのインフラ設備の点検に人工知能(AI)を応用するもので、構造物をハンマーでたたいて異常を検知する打音検査にディープラーニングを融合。コンクリートのヒビなどの異常を検査する。

発表は電子情報工学科4年の前川蒼さんと小川大翔さんの2人が担当した。開発のきっかけは学校の設備でコンクリートが剥落していたことだ。前川さんは「なぜ剥落する前に気づけなかったのだろう」とプレゼンでも語っていた。チームはアイデアを練って地元の建築会社や木材の専門家にヒアリングをした際に「人の命を守る大事なアイデアだ」と言われ、開発を進める決意を固めた。

仕組みはこうだ。打音検査に使うハンマーに、SDカードを入れたマイコンを取り付ける。ハンマーには加速度センサーが組み込まれており、たたく寸前から録音が始まる。ハンマーで対象物をたたいて打音データを集め、マイコンに入っているSDカードをパソコンに移す。パソコンのアプリにデータをアップロードし、AIを搭載し学習・推論させるエッジAIと、取得したデータをネットワークを通して、サーバーなどに送信し、学習させるクラウドAIをうまく融合させた。

SDカードは木材や水道管、ガス管など対象物の種類によって様々なパターンの学習モデルを作成できる。SDカードをマイコンに戻して再び対象物をたたくと、内部にひびなどの異常がある時にマイコンとともに取り付けた機器の表示画面で数値が高く出る仕組みだ。

プレゼンの中で、チームは打音検査10年のベテランにも協力してもらいディープラーニングの改良を繰り返し、異常を検知できる精度が93.3%まで上がったと発表した。熟練の点検員とも遜色のない数値だ。また、競合製品との比較でも小型化や価格などで優れている点を分かりやすく解説した。

会場にいた特別協賛企業でビルの設備管理などを手掛ける総合アウトソーシング会社のアイングの関係者が身を乗り出し、うなずきながら壇上のスクリーンをじっと見つめていた。

プレゼンが終わり審査員の質問が始まった。まずこのビジネスを評価したのが、ソフトバンクグループ傘下のディープコア社長の仁木勝雅氏だ。仁木社長はマイクを持つやいなや「最初に言っておくと私は丸をあげます」。つまり投資に値すると審査した。この段階では異例の発言に会場が沸いた。

プレゼンだけで審査員にここまで言わせたのは、インフラ設備は必ず老朽化する、だからこそ点検のための安価で高精度なデバイスが必要という明快な論理を貫いたことだろう。全国の高専の多くに建築関連の学科があり、老朽化するインフラは身近な問題でもあった。

質問の中で、東京大学エッジキャピタルパートナーズの郷治友孝社長は「打音だけでなく、非破壊検査のような他の方法もあるが」と指摘した。すると学生からは「朝と夕方の熱の差でひび割れを判断する方法もあるが、実際には怪しい箇所をハンマーでたたくのが一般的だ」と回答。徹底した調査の成果が見えた。

審査員でWiLの松本真尚氏は実際に起業した後の体制が気になるようで「2人のどちらが社長として会社を進めていくのか」と聞いた。すると前川さんが「僕です!」と即答。小川さんも「納得しています」と答えチームの団結を示した。

市場調査も徹底

一連のプレゼンや質疑応答で審査員の心をつかんだのは、徹底した市場分析を背景にして作り上げた事業モデルだ。AIを活用した打音検査のビジネスは既に他社が展開している。チームは従来の打音検査と他社の製品の課題を挙げ、D-ONが優れていることを示した。特許も出願中だ。

まず従来、打音検査では熟練の点検員による判断が必要だ。これはディープラーニングにより、木材や水道管、ガス管などウェブでそれぞれの学習モデルを作成して数値で示すことによって、熟練の点検員でなくても判断できるようにした。

既存の他社の打音検査システムは様々な設備が必要だ。今回はSDカードが入ったマイコンを使って価格を下げ、設備を軽量化した。従来の打音検査ではトンネル1本で約200万円かかるところ、約130万円で済むという。

後の表彰式で、経営共創基盤の共同経営者を務める川上登福氏は「打音点検を小さなデバイスにした。ハンマーを選ばずに、世界中で展開できる」とし「いろんな企業の人もこのような発想をまねてほしい」と総括した。

福井高専チームのメンターのさくらインターネット社長で、自らも舞鶴高専出身の田中邦裕氏は最優秀賞が発表された瞬間、うれしさのあまり飛び上がってしまい、前の椅子に膝を思い切り打ちつけて、緊迫する順位発表の雰囲気を和らげたのも印象的だった。

(結城立浩)

[日経産業新聞2021年5月10日付]

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