2021/5/10

「制約がある中でどう働き続けるか、前向きに議論できる」。3月、第1子の出産後6カ月で職場に復帰したテクノロジーコンサルティング本部のマネジング・ディレクター、小森寛子さんも話す。産休直前まで担当していた顧客とのプロジェクトに戻るため、上司と復職後の働き方について話し合ったという。「夫の転勤で悩んでいた女性社員が、転居先で携われるプロジェクトを勧められた例もある。一人一人が実力を発揮するために皆で考えようという雰囲気がある」

「女性の視点、業績に直結」 江川昌史社長に聞く

アクセンチュアの江川昌史社長

――女性の活用を進める意義は何ですか。

「女性の視点がなければビジネスが成り立たない。2015年の社長就任時、日本はデジタル化のさなかだった。女性のウェブユーザーの思考回路をつかむには、女性目線が必要だった」

「社内のダイバーシティが進めば業績は上がる。その方程式をつくり上げることが社長の役割だと考えた」

――活用の効果をどのように感じますか。

「15年当時デジタル業務の売上比率は数パーセントだったが、今では7割近くにまで成長した。女性や若い世代の客層を取り込んだ結果だ」

――社内改革は順調に進みましたか。

「コンサルティング業界は男性文化が根強く、批判的な声もあった。デジタル化にはダイバーシティ推進が欠かせないと説明を重ね、理解を得た」

「すると今度は、男性陣が子育て中の女性社員に早く帰るように声をかけるなど、過剰な配慮をするようになった。画一的におもんぱかった行動は、仕事を優先したい女性には迷惑になる」

「人事でも男性が高い評価を得やすく、昇進が早い傾向があった。誰もが持つ無意識の偏見を取り除くための研修を行い、会議や人事評価の現場でもマイノリティーの立場を実感できる仕掛けをつくっている」

――女性社員の変化を感じますか。

「女性管理職が増えるに従ってロールモデルも多様化し、自分もリーダーになれるとの自覚が生まれている。昇進を断る女性社員は減った」

「アクセンチュア全社で25年までに社員の男女比を同数にする目標を掲げる。日本法人でも新入社員の半数は女性だ。目くじらを立てて数値を追わなくても、経営戦略のもとで女性が自然体で活躍すれば人数も増える」

地道な研修や制度づくりがカギに
外資系の会社は女性活躍の意識が高くて当たり前では――。取材前の先入観は大きく変わった。売り上げを高めるための経営戦略で欠かせない要素がダイバーシティの視点だったという。男性中心の社内風土を現場視点で見直し、研修や制度を地道につくり上げてきた。
2016年には完全在宅勤務を可能にするなど、他社に先駆けた働き方改革が実を結んだ。外国人やLGBTQ(性的少数者)、障害者の雇用にも様々な試みをしている。足元の女性社員比率は約35%。「女性がナチュラルに活躍する会社」(江川社長)とのイメージが加速する今後に期待したい。
(松浦奈美)

[日本経済新聞朝刊2021年5月10日付]