福井の若狭牛 出荷は年600頭、貴重な肉の甘みと後味

牛若丸の和牛4種盛りは部位を食べ比べて好みを見つけられる
牛若丸の和牛4種盛りは部位を食べ比べて好みを見つけられる

福井県のブランド牛「若狭牛」。越前がになど海産物で知られる福井だが、変化に富む四季と豊かな自然の中で高品質な牛が育つ。丹精込めて飼育された若狭牛は、きめ細かいサシの入った霜降りのある柔らかい肉質が特徴。甘みがありつつ後味はさっぱりしている。

県内全域で20軒ほどの農家が飼育する。JA福井県経済連畜産課によると出荷は年600頭前後。生産量が少なく県内消費がメインという。県内で12カ月以上の肥育に加え、肉質等級やサシの状態など認定要件は厳しい。各生産者が牛の体調管理や餌を工夫し、肉質で最高のA5等級が半数ほどを占める。

若狭牛肥育農家で最大のサンビーフ斉藤牧場(福井県坂井市)が直営する焼肉店「牛若丸」は、あわら温泉(同県あわら市)の温泉街近くにある。同牧場の2代目、斉藤力さんが「若狭牛を出す焼肉店は少ない。食べてもらえる環境をつくろう」と2001年にオープンした。自社サイトなどでインターネット通販も手掛ける。

独自の餌で育てた牛肉を厳選して提供できるのが強み。「柔らかく、脂のくどさが感じられないと好評」(ネット通販や調理担当の林拓馬さん)。特上カルビ、ヒレ、ロース、モモの4種盛りを味わってから、気に入った肉を注文するのがお薦めという。

青山さんが手際よく「一番おいしい焼き加減」に焼いてくれる

福井市の繁華街、通称片町の一角にあるのが若狭牛専門の「ステーキハウスアオヤマ」だ。ステーキを焼いて40年超の青山英治さんが30年ほど前に独立、開業した。夫婦2人で切り盛りする。地元の常連客に加えて県外からの出張者や観光客も多く訪れる。

カウンター9席のみ。「一番おいしい焼き加減が分かる」と言う青山さんが、客の好みに目を行き届かせ焼く。冷凍は使わず、最高級の肉をその日使う分のみ仕入れる。サーロインでもあっさりし「小学生も200グラムをペロッと食べる」。

「しゃぶしゃぶ万両」では最高級の若狭牛を特製ポン酢で食べる

「しゃぶしゃぶ万両」は若狭牛のしゃぶしゃぶが堪能できる。福井駅から車で10分ほどの市街地にあり、1972年創業。個室6室と離れで落ち着いて味わえる。2代目店主の玉松昇児さんは「だしにくぐらすだけなので、新鮮でいい肉でないとすぐ分かる」と、仕入れにこだわる。

玉松さんの父が京都での修業から帰って開業。先代が開発した秘伝のポン酢も売りだ。酢をあまり効かさず肉の味を引き立てる。同店は通販も手掛ける。玉松さんは「うちの店でしか食べられない味を楽しんでほしい」と話す。

<マメ知識>最大産地は越前地域
「若狭牛」は1987年にブランド化され、肥育農家は全県に分布する。「若狭」と名が付くが、最大の産地は県北部(越前)の坂井市だ。JA福井県経済連畜産課によると、ネーミングについては諸説あって真相は分からないということだ。
2014年には付加価値向上を狙い、福井県若狭牛流通推進協議会が「三ツ星若狭牛」の認証を始めた。若狭牛の中でも、おいしさが増すというオレイン酸含有量が牛脂中55%以上などで認定。近年は出荷全体の半数ほどが三ツ星の認定を受けている。

(福井支局長 佐藤栄基)

[日本経済新聞夕刊2021年5月6日付]