経団連次期会長の十倉氏 科学の魅力『火の鳥』に学ぶ住友化学会長 十倉雅和氏

住友化学会長 十倉雅和氏
住友化学会長 十倉雅和氏
経済界きっての漫画通だ。

漫画が大好きです。小学生のときに少年マガジンや少年サンデーが創刊されて以来、白土三平さんや石ノ森章太郎さん、会社員になってからは弘兼憲史さんや浦沢直樹さんなど幅広く読んできました。

手塚治虫さんの『火の鳥』に出合ったのは、兵庫県立西脇高校に通っていた頃に雑誌COMに掲載されたのを読んだのが最初です。連載は掲載誌を替えて続き、手塚さんが亡くなったために未完で終わります。

生命と輪廻(りんね)、地球、宇宙、人類といったテーマを扱い、物語は過去から未来、そしてまた過去へと時空を移動して展開します。

たとえば、私が好きな「未来編」の舞台は紀元35世紀。人工知能(AI)が支配する世界で核汚染のために地下で暮らす人間はいがみあい、最後はAIが暴走し戦争になり、滅びます。

火の鳥に導かれ不老不死を手に入れた主人公は、体が朽ちても精神は死なず、何十億年と生き続けます。その間、新たな生命体の誕生から進化を経て、高等知能を持つ生物が何度か生まれますが、それもまた滅びます。死ぬことができない主人公は、繰り返される過ちを見守ります。

これが50年前に描かれたことに驚きます。AIや生態系の破壊といった題材は今でも色あせません。

『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』など、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著作も「火の鳥」に通じます。

ハラリ氏は1国では解決できない、多国間で向き合わなければならない3つの課題として、核戦争と生態系の破壊、そして破壊的な技術を挙げます。

破壊的技術の代表がAIであり、バイオゲノムです。遺伝子を操作すれば、知能指数の高い人や速く走れる人をつくることができます。AIやデジタル技術を駆使すれば、自分よりも自分をよく知る存在であるデジタルツインが生まれます。それを自分でなく、国家が握るかもしれない。こうした未来に人類はどう向き合うのかとの問題を提起します。

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