進んだか?日本の女性活躍 世界からの「遅れ」認識を
ダイバーシティ進化論(水無田気流)
本欄の私の担当は、今回をもって最終回となる。6年近く続けられたことを、読者のみなさまには心より感謝申し上げる。安倍晋三政権と並走して来たため、アベノミクスの「女性活躍」を問い直すことが多かった。そこで改めて、政権発足時の2012年からの成果を振り返りたいと思う。
まず、働く女性の数だ。総務省の労働力調査によれば、12年12月の女性就業者数は2651万人。それが19年同月は3000万人と349万人増えた。年平均を比較しても7年で338万人増となり、安倍政権時代に働く女性は大幅に増えたといえる。ただし女性の多数が非正規雇用という状況に変化はなかった。
「2020年までに指導的な立場の女性割合30%」という目標はどうだろうか。12年、管理職に占める女性割合は、民間企業の係長級が14.4%、同課長級7.9%、同部長級4.9%であった。19年には同係長級18.9%、同課長級11.4%、同部長級6.9%。微増にとどまっている。
女性の政治参加も微増だ。国会議員に占める女性割合は12年に衆議院7.9%、参議院18.2%だった。20年は衆議院9.9%、参議院22.9%だ。
ダイバーシティ推進とは、あらかじめ内部でのあつれき調整の経路を増やし、激しい外的変化への対応を容易にする方途でもある。近年、世界は大きく変わった。アベノミクスの「女性活躍」は包括的な日本社会革新の契機となるべきだったが、結果的には女性を雇用の調整弁として活用するにとどまった。
男女平等の度合いを示す世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」に日本の歩みが如実に現れている。12年は135か国中101位でスコアは0.653。21年は156か国中120位、スコア0.656と、下位グループから抜け出せない。
ジェンダーギャップ指数とは、受験生の偏差値のようなものだ。自分なりに頑張って勉強しても、周囲がそれ以上に努力すれば自身の偏差値は下がってしまう。「日本なり」の努力の跡は認められるが世界各国の進展はそれ以上。まずはその落差を認識すべきだろう。ここのところ次々と引き起こされる公人の女性蔑視発言は、日本の「遅れ」の証左といえる。
それでも世界観の変革は、社会を変えていく。醜聞や告発もまた、その契機と信じたい。
1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。
[日本経済新聞朝刊2021年4月19日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。