夜間頻尿で睡眠不足や転倒リスク 排尿日誌で原因探る

写真はイメージ=PIXTA
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夜中に何度もトイレに起きてしまう夜間頻尿。高齢になると症状が出やすいが、「年だからしょうがない」と放置すると、眠気に悩まされて生活の質が低下するだけでなく、廊下などで転倒するリスクも高まる。「排尿日誌」で日々の記録を管理し、症状の原因を探ることが対策の第一歩となる。

「毎晩、4回はトイレで起きていた」。仙台市在住の70代男性は約3年前からトイレの回数が増え始め、午後11時ごろ就寝し、2時間ごとにトイレに起きるようになった。「朝起きても眠気が取れず、朝食後に仮眠を取っていた」

夜間頻尿は「夜、排尿のために1回以上起きてしまう状態」。日本大医学部の高橋悟教授(泌尿器科)によると、日常生活に支障がなければ問題ないが、一晩に2回以上の場合は診察を受けた方がよいという。

日本排尿機能学会(東京)が2002~03年、40歳以上を対象に実施した調査によると、夜間頻尿は国内で約4500万人いると推定。高橋教授によると、原因は(1)夜間多尿・多尿(2)ぼうこう蓄尿障害(3)睡眠障害――の大きく3つに分けられる。

このうち最も多いのが夜間多尿で、仙台市の70代男性もその一人。高齢者の場合、夜間の尿が一日の尿量の33%を超えると夜間多尿とされる。

通常、寝ている間は「抗利尿ホルモン」の働きで尿をつくる働きが抑えられ、排尿のため起きなくても済むが、加齢で同ホルモンの分泌量が減ると夜間にも尿が多くつくられてしまうという。

また心臓などの機能が低下し足に水がたまりやすくなると、就寝し横になった時に水分が心臓の方に戻り尿量も増える。

排尿の頻度を抑えるには生活習慣の見直しが必要だ。塩分を控え夕食後は利尿作用のあるカフェインやアルコールの摂取を避ける。夕方の適度な運動も効果がある。シャワーだけでなく湯船につかると、水圧でむくみがとれやすい。

夜間多尿は近年、治療薬が国内で認可された。仙台市の70代男性は1年前から服用し夜間のトイレの回数が1~2回減ったという。薬を使えるのは男性に限られるなど条件がある。

夜間に限らず、一日の尿量が多い状態の多尿は、体重×40ミリリットル(体重60キロの場合2.4リットル)以上が目安だ。健康志向の高まりで脳卒中などの予防のため水を多く飲む人もいるが、高橋教授によると、食事以外の水分は1~1.5リットルが適量という。

十分な尿がたまっていないのに、ぼうこうが収縮する過活動ぼうこうや、男性の場合は前立腺肥大症も夜間頻尿の原因となることがある。通常ぼうこうは400~500ミリリットルの尿をためられるが、1回の尿が200ミリリットル以下の場合は泌尿器科を受診した方がよいという。睡眠障害で眠りが浅く、軽い尿意でトイレに起きてしまうケースもある。

原因を探るのに有効なのが「排尿日誌」だ。ペットボトルの飲み口を切り取り、計量カップを使って、目盛りを付けた容器を用意し、排尿時刻や量を3日間程度記録する。夜間の尿量が多いと夜間多尿が疑われるなど原因の特定につながる。排尿日誌は日本排尿機能学会のホームページから無料でダウンロードできる。

高橋教授は「夜間頻尿は完治は難しいが、対策をとれば3~4回を1~2回に減らすことはできる。まずはかかりつけ医に相談してみてほしい」と呼びかけている。

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足元灯や手すりで安全確保

夜間のトイレは転倒リスクと隣り合わせだ。泉中央病院(仙台市)の中川晴夫医師が2003年から5年間、仙台市に住む70歳以上の約800人を調査したところ、夜間トイレに2回以上行く人が骨折して入院した割合は、1回以下の人の2倍に上った。

寝室からトイレへの動線の安全を確保することが重要だ。作業療法士で大阪保健医療大学の准教授だった山田隆人氏は(1)手すりの設置(2)照明の設置(3)トイレを近くに移設する(4)床の段差を改善する――の4点を挙げる。

照明は近づくと点灯するセンサー式足元灯が有効で6~7万円程度。同じ階にトイレがある場合は約5万円で手すりを設置できる。トイレを寝室近くに移す場合は50万円以上かかることも。寝室とトイレの間に電源コードなどの障害物がないかも確認したい。じゅうたんなど小さな段差もつまずく原因だ。

(朝比奈宏)

[日本経済新聞夕刊2021年4月7日付]

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