宮城産が充実 東北最大級の商業施設にイオンの旗艦店
イオン傘下で本州・四国で総合スーパー(GMS)を運営するイオンリテールは5日、「イオンスタイル新利府」(宮城県利府町)を開業した。東北の旗艦店をうたい、地場産品などを充実させた。イオンは地域戦略の一環で2020年3月に東北地方の傘下スーパーを再編しており、グループの連携を示す試金石の店舗でもある。
JR東日本の新幹線車両基地に面し、高速道路のインターチェンジにもほど近い土地に「イオンモール新利府 南館」(同)がそびえたつ。テナントに貸し出す総賃貸面積は北側の既存棟と合わせ10万2千平方メートルと東北最大のショッピングセンター(SC)で、イオンモール全体でも3番目の規模になる。
このモールの核店舗となるのがイオンスタイル新利府だ。売り場面積は約1万3200平方メートルと南館の中でも2割ほどにとどまる。他のイオンモールにあるイオンスタイルに比べるとやや小ぶりな印象だが、新たな試みが凝縮する。
イオンは日本各地でGMSと食品スーパー(SM)の再編を進めた。重複する分野を集約し、購買面などでスケールメリットを出しつつ、地場産品を開発しやすくする狙いだ。東北では20年3月にイオンリテールが食品部門を分社し、マックスバリュ東北(秋田市)と統合して新たにイオン東北(同)が発足した。
今回のイオンスタイル新利府もイオンリテールが運営するものの、1階の食品売り場はイオン東北が出店した形をとる。イオンリテールの金野司東北事業本部長は「分社化したことで知識の高い売り場ができあがった」と語る。
「宮城たべてけさいん」。1階の食品売り場で目を引くのが大きな文字と共に山積みになった野菜や果物などの産地直送売り場だ。宮城県の特産物である「仙台曲がりねぎ」や「雪菜」といった野菜がある。焼き肉のたれにも宮城の特産である利府梨をアレンジしたオリジナル品も取りそろえる。
水産売り場でも地元の石巻漁港や七ヶ浜の漁港で水揚げされた「地獲れ鮮魚」を提供する。塩釜漁港で水揚げした生のまぐろを仕入れ、店でおろして刺し身やすしとしてならべる。
仙台市中央卸売市場から直送する鮮魚も扱い、焼き魚といった総菜類も提供する。イオンリテールの金野事業本部長は「東日本大震災で打撃を受けた生産者の支援につなげたい。特に水産売り場は重視した」と説明する。
イオンリテールが直営する2.3階の衣料品・生活用品売り場ではスポーツやアウトドア関連の衣料品「スポージアム」の大型売り場を展開する。4月にはイオンのフィットネスクラブ「3FIT(スリーフィット)」も開業する予定だ。
宮城県は10年前の東日本大震災で最大の人的被害を受けた県だった。インフラの再整備が進み、見かけ上は復興しても傷痕は今も県内の随所に残る。イオンスタイル新利府を含めた「イオンモール新利府 南館」への期待は大きい。利府町の熊谷大町長は「あの時の悲しみを包む光」と開業式典で表現した。東北でのイオンの新境地と、今も変わらぬ復興支援への役割を担っている。
(古川慶一)
[日経MJ 2021年3月24日付]
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