サイゼリヤ「ミラノ食堂」 増量ドリア、1分半で提供

日経MJ

ミラノ食堂のドリアは通常より1.5倍増量している
ミラノ食堂のドリアは通常より1.5倍増量している

イタリアンレストランを展開するサイゼリヤが人気メニュー「ミラノ風ドリア」を中心に扱う専門店を都内に開業した。店舗の広さは通常のサイゼリヤの半分程度で家賃負担が軽くすむほか、メニューを絞ることで注文からわずか1分半で料理を提供できるのが特徴だ。新型コロナウイルスの感染拡大の収束時期が見通せないなか、売り上げが伸び悩むなかでも収益を上げられる新しい事業モデルを構築する。

新業態の店名は「ミラノ食堂」。ドリアなど洋食メニューを中心にそろえており、500~800円(税込み)で提供している。主力のドリアはプレーンに加え、チーズを通常より多くのせたものやカレーを上にのせた3種類を用意した。

トッピング用にホウレンソウや揚げたエビなどもそろえ別途注文すれば自分好みに味を調整できるのが楽しみの1つだ。

オフィス街に店舗を構えるミラノ食堂(東京・中央)

ドリアは通常のサイゼリヤの店舗で提供するメニューと比べて、1.5倍に増量することで働き盛りの成人男性でも十分満足できるようにした。

店舗は茅場町駅近くのオフィス街に立地し、ランチタイムと夕食需要を見込んで午前11時から午後8時まで営業している。

忙しい会社員の需要に応えるため、ドリアの提供時間の早さにこだわったという。

ソースや具材は直径約30センチの底が浅い皿に薄くひいて火が通りやすくし、繁閑に合わせて枚数を調整したうえでコンベヤー式の焼き機にのせておく。注文後すぐに焼きたての商品を取り出せるようにして、客の回転率を高めようとしている。

サイゼリヤは、新型コロナ感染拡大を防ぐための外出自粛や時短要請で不振が続いている。

2020年9月~11月期の連結純利益は2億5千万円と前年同期比81%減った。「ワクチンが開発されても売り上げはもとにはもどらない」(堀埜一成社長)とみており、コロナ収束後も見据えた新たなビジネスモデルを構築する。

ミラノ食堂はこうした施策の一環で実験的に運営している。サイゼリヤの平均的な延べ床面積は230平方メートル程度だが、同店は112平方メートルで出店費用を半分以下に抑えられる。店内飲食用に約30席を備えるが、コロナで利用が伸びる宅配と持ち帰りで売り上げ全体に占める比率を4割に高めるなど、客が少なくても収益をあげられるような仕組み作りを模索している。

サイゼリヤはコロナ下で新型コロナウイルスの感染を防ぎながら、収益を高める取り組みを進めている。

20年7月に全メニューの税込み価格の端数をゼロに統一した。新型コロナウイルスの感染予防対策の一環で、会計時にお客が受け取る釣り銭を減らす狙いがある。同時にキャッシュレス決済も進め、コロナ後のニューノーマル(新常態)に合わせた店づくりを目指している。

5月までに都内に従来の6割程度の広さのサイゼリヤも出店する計画だ。都内では居酒屋を中心に飲食店の大量閉店が相次ぎ、空き店舗が増えている。同社はこれらの物件を小型店の出店に生かし、今後の事業の柱に育てたい考えだ。

(井上航介)

[日経MJ 2021年3月17日付]