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専門医がまとめてICU見守り 遠隔支援で感染も抑制

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NIKKEI STYLE

集中治療専門の医師が、ディスプレー画面を見ながら、離れた複数の病院のICU(集中治療室)にいる患者の容体に目を光らせる――。こんな光景が広がり始めた。遠隔ICUと呼ばれるシステムだ。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大。最先端のIT(情報技術)が医療従事者同士をつなぎ、患者の命を守る時代がやってきた。

「呼吸状態に異常が見られます」――。昭和大学病院(東京・品川)の一室、「集中治療支援センター」でベテランの集中治療医が見つめるのは目の前に並ぶディスプレー画面だ。同病院と昭和大学江東豊洲病院(東京・江東)にある計5つのICUの約50床の患者を常時見守っている。新型コロナウイルスに感染して呼吸不全となり、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)で治療を受ける重症患者もいる。

各画面には病床のカメラ映像のほか患者の心拍や呼吸数、血液検査の結果などが映し出されている。どの患者から優先して治療すべきかや、各患者をICUから退室させた場合に48時間以内に死亡するリスクなども分かる。危険な兆候があればアラートで知らせる。

集中治療支援センターの室内には医師と認定看護師、事務員から成る3人のチームが常駐。異常を察知したり、支援要請があったりすればビデオ通話機能でICUのスタッフに助言を与える。

昭和大学病院は高度な治療を担う特定機能病院として、1年前からコロナの重症患者を多数受け入れてきた。感染拡大の「第3波」が襲った2020年末から21年1月にかけては、10人もの重症患者を並行して治療する状況だった。

さらに同病院のICUが埋まり、それまではコロナの軽症患者を診ていた江東豊洲病院が重症患者を受け入れた時期もある。こんな緊急事態を救ったのが18年5月から導入していたオランダの医療機器大手フィリップスの「遠隔集中治療ソリューション(eICU)」だ。ICUの患者の生体情報や検査結果を専用のソフトウエアが自動で収集。数百万症例のデータを学んだ解析エンジンで現場の意思決定に役立つ情報を導く。

特に役に立ったのは、ICUに入る医師や看護師の数を最小限に抑えられる点だ。感染リスクを抑えながら「判断に悩む場面ではベテランの医師が助言し最善の治療ができる」(集中治療科の大杉浩一助教)。相談内容は人工呼吸器やECMOといった医療機器の使い方や設定のほか、鎮静剤など薬剤の処方に関するものが多い。ソフトウエアが示す情報のおかげで、病状悪化のリスクも早めに察知しやすくなった。

約3年間の運用を通じてICUでの患者死亡率が半分以下に下がるなどの成果が上がっている。「どのICUでも標準化された質の高い治療を提供できるようになった。若手スタッフへの教育効果も大きい」と大杉氏は話す。

湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)もコロナ対応に遠隔ICUを活用する医療機関の一つだ。20年2月以降、軽症と中等症を中心に1000人以上のコロナ患者を受け入れてきた。同年5月には神奈川県と協力し、病院の隣接地にコロナ専用の仮設病棟を建設。21年1月のピーク時には100人を超える患者を受け入れていた。重症化した患者の搬送先が満床になるリスクに備え、院内のICUの一室で重症患者を治療できる体制にした。

仮設病棟やICUでの治療を支えたのが、手術室施工大手のエア・ウォーターの遠隔診療支援システム「ノアロン」だ。患者のカメラ映像や心拍や呼吸数などの情報を院内の支援室に集約。集中治療医が画面を見ながら、現場の医師や看護師にビデオ通話機能で助言する。

ある時、仮設病棟に入院中のコロナ患者が心筋梗塞を起こし、院内のICUで急きょカテーテル治療を実施。支援室からの助言が迅速な治療に役立った。

人員のやりくりに苦労する中、仮設病棟やICUに頻繁に足を運ばなくて済む利点も大きい。集中治療部の神尾直部長は「医療安全の向上に加えスタッフの働き方改革につながっている」と話す。個人用防護具(PPE)を着脱する回数が減り、スタッフの疲労軽減や消耗品の節約にもつながった。

集中治療の専門医は全国に2000人弱しかおらず、しかも都市部に偏っている。遠隔ICUを医療機関同士の支援に活用できれば、地域医療の水準の底上げにもつながる。昭和大学病院の大杉氏は「他の医療機関の支援も目指したい」と話す。医療スタートアップのT-ICU(兵庫県芦屋市)など遠隔ICUの専門企業も登場している。

◇  ◇  ◇

医療のデジタル化先取り

遠隔ICUは医療のデジタル化を先取りする動きのひとつだ。湘南鎌倉総合病院の神尾氏は「高速通信規格『5G』や人工知能(AI)を取り込む時代もくる」とみる。

東京女子医科大学(東京・新宿)は20年10月、NTTドコモと5Gを使った遠隔医療の実証実験を実施。大容量データを遅延なく伝送する特徴を生かし、同大学と東京・台場の医師が超音波画像を共有しながら診察するデモを見せた。

瞬時の状況判断が問われる集中治療はAIとも親和性が高い。フィリップス・ジャパン(東京・港)の堤浩幸社長は「データをAIで解析すれば、一人ひとりの患者に最適な治療を提供できる」と話す。

課題は費用や情報セキュリティーだ。使うシステムや規模にもよるが遠隔ICUは年に数百万円から数千万円の運用費がかかる。導入に対する診療報酬は設定されておらず医療機関の持ち出しになる。電子カルテに接続したり、データを他施設とやりとりしたりする際にはシステム障害や情報漏洩への細心の注意も求められるだろう。

(大下淳一)

[日本経済新聞朝刊2021年3月8日付]

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