デジタルで小売り強く 業態の垣根越え新市場をイオン 吉田昭夫社長

売上高8兆円を超える業界最大手のイオンはどこまで機敏に環境変化に対応できるか――。創業家の岡田元也氏の後を継いで昨年就任した吉田昭夫社長は「巨艦」ゆえ遅れが目立つ経営改革のピッチを上げなければならない。世界最大の米ウォルマートは過去の成功モデルから決別してデジタルを軸に新たな成長ステージに入った。吉田氏に展望を聞いた。

コロナ後の成長、5つの分野注目

――2020年3月1日の社長就任からまもなく1年がたちます。

「防疫と事業の両立に追われた1年でした。小売業は地域の生活者がお客様です。地域を守るという視点が欠かせません。20年6月にグループの防疫基準をまとめ、科学的視点を重視した対策に取り組んできました」

――コロナ後に期待する成長領域はどこですか。

「5つの分野に注目しています。(1)デジタル、(2)健康、(3)環境、(4)地域、(5)アジアです。小売業だけでなく他の産業もこれらに強い関心を持っています。ここで当社が存在感を示せるかが課題です。小売業界の中でも、業態の垣根はなくなりつつありますし、メーカーと小売りの垣根も薄れてきました。メーカーはD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)、小売りはSPA(製造小売業)にそれぞれ進出し、混ざり合っています。デジタル化が進み、消費者は店舗でもオンラインでも自由に商品を選んでいます。こうなってくるとPB(プライベートブランド)など、支持される商品をいかに持つかが重要になります」

――米ウォルマートをどう見ていますか。

「店舗をネットスーパーの受け取りや配送の拠点にしています。リアル店舗をうまく活用したデジタル化の成功例で、方向性は参考になります」

――ウォルマートは保有する西友や英アズダの株式の大半を売却する一方で、ネット企業を多数買収し、急速に事業ポートフォリオを組み替えています。この点、イオンは踏み込み不足では。

「企業規模が違います。ウォルマートはあれだけの企業規模があるからこそ、M&A(合併・買収)や事業の切り出しをダイナミックに進められます。一概には比較できません。ビジネスモデルも違います。ウォルマートは小売り中心ですが、イオンは不動産や金融の収益貢献が大きい」

「ただ小売部門はウォルマートの様に、リアル店舗とネットをシームレスにするようデジタル化を進めます。強い小売りを作るためには、デジタルは避けて通れません。仮に小売りでデジタル化に出遅れるようなことがあれば、かなりのハンディキャップになります。ですから積極的に投資をしていきます」

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