師匠は夏井いつきさん 『俳諧大要』で見え方が変わる長野県知事 阿部守一氏

阿部守一氏と座右の書・愛読書
阿部守一氏と座右の書・愛読書
体格がしっかりしていて、一見すると押しが強い印象を受けるが内向的な性格だったという。
あべ・しゅいち 1960年生まれ。84年東大法卒、自治省(現在の総務省)入省。長野県副知事、総務省過疎対策室長などを経て2010年9月から現職。

仕事柄、いろいろな方とお会いし、話をしますが、昔から人付き合いは苦手です。小中学校の友人の多くは「なんであいつが知事をやっているのか」と感じていると思う。自分の殻にこもって一人で本を読むのが好きだったし、本屋に行くのが趣味でした。

だからこそ、人がどういう時にどう行動するのか、何に影響されるのかなどといったことに関心がある。例えば、今はコロナで高齢者などに外出を控えてくださいとお願いする。丁寧に呼びかけるのですが、人の行動に制約を課すわけで、重い責任がある。

そういう時に、本棚から引っ張り出してめくるのが『権力に翻弄されないための48の法則』です。過去の歴史を踏まえた人間くさい物語のなかで「必要以上に多くを語るな」など、様々な教訓を示してくれる。しかも、その教訓を守らずに失敗した事例が多く出てくる。本当に参考になるのは、なぜ失敗したのかということですから。

『人を動かす』も同じような内容ですが、これは人からプレゼントされた本です。自治省(今の総務省)に入って3カ月がたち、私が初めて赴任したのは山口県庁になります。新幹線の小郡駅(現在の新山口駅)に降り立った時、県庁の上司が迎えに来てくれていて、その上司からいただいたのです。

その方は直接的には何も言いませんでしたが、自治省から若い職員が来たわけですので、人の心をちゃんと理解しながら仕事をしろよというメッセージがあったのだと思います。以来、持ち歩いて折に触れて読んでいます。

仕事をするうえで影響を受けたのが『社会的共通資本』であり、著者の宇沢弘文氏だった。

宇沢先生とは私が長野県の副知事をしていた時に初めて直接お話ししました。当時の田中康夫知事が県の新しいビジョンを策定する方針を打ち出し、その専門委員会の座長を宇沢先生がなされた。先生の軽井沢にある別荘でみんなで合宿し、これからの長野県について話し合ったりしました。

社会的共通資本のひとつに医療や教育などの制度資本があるのですが、そうしたものは職業的専門家による職業的規律で運営されるべきだと宇沢先生は力説されていました。医療ならば医療関係者の倫理がある。それに基づいて行動しなければいけないし、行動できる社会をつくることが大事です。

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