コロナで?「遅寝遅起き」 遅刻が続く…それ病気かも

睡眠相後退障害は光の量の調整や、睡眠ホルモンを調節する薬で治療する
睡眠相後退障害は光の量の調整や、睡眠ホルモンを調節する薬で治療する

夜更かしして朝起きられず、生活に支障が出ているなら「睡眠相後退障害」かもしれない。2020年には同様の症状に悩む人が多かったとの調査もあり、新型コロナウイルスの流行による生活の変化が影響したとみられる。朝に日光を浴び、夜は強い光を避けリラックスするほか、必要なら病院を受診するのもよい。

睡眠相後退障害は極端な遅寝遅起きが続き、遅刻するなど生活に支障が出てしまう病気だ。日中に強い眠気を感じることもある。患者は10~30代が中心で、多くは遅い時間帯に寝る方が自然な「夜型」の人だ。

東京都在住の男性(33)は睡眠相後退障害の患者の一人だ。高校時代から寝るのが遅く遅刻続きだった。就職後も同様で休職を余儀なくされ、5年前にこの障害と診断された。現在は朝日を意識的に浴びるなどし、治療薬も活用して仕事も続けている。

男性の治療にあたる東京医科大学病院の志村哲祥兼任講師は「新型コロナの流行などがきっかけで、睡眠リズムの不安定だった人が睡眠相後退障害を再発している」と話す。

医師などで作る「ウーマンウェルネス研究会」は20年7月、首都圏の20~50代男女約900人にインターネット調査を実施した。新型コロナの感染拡大後、睡眠の質が悪化した人に原因を聞くと、約4割が「遅寝遅起きの習慣化」をあげた。監修した国立精神・神経医療研究センターの栗山健一部長は「睡眠相後退障害の患者が増えていると思われる」と話す。

背景には、テレワークの増加など生活の変化があるという。人はもともと遅寝遅起きになりやすいが、朝に日光を浴びて体内時計をリセットすると、夜にほぼ同じ時間帯に眠気を感じるようになる。だが外出自粛などで、外よりも暗い室内にいる時間が増えると体内時計がずれて遅寝になりやすい。運動不足で血行が悪くなるのも入眠を妨げる。

新型コロナの流行が収まると、再び出勤中心になる企業もあった。テレワーク中心で遅起きが習慣になると、いざ出勤するときに早起きに戻しにくい。「感染や生活への不安といったストレスも睡眠に悪影響を及ぼしやすい」(栗山部長)

どう対処したらよいか。栗山部長は「起床後2時間以内か、遅くとも午前中に計30分程度屋外で日光を浴びるとよい」と話す。室内にいる場合は窓際で日を浴びるのもおすすめだ。

夜は強い光を避け、リラックスして入眠しやすくする。パソコンやスマホ、テレビなどの使用は避ける。睡眠に詳しい日本大学の鈴木正泰教授は「寝る2~3時間前にはスマホなどをやめ、寝る90分前くらいに風呂に入るとよい」と話す。

夜遅くまで仕事をするのも、緊張が解けず入眠しにくい原因になる。栗山部長は「日本人は勤務時間外でもメールを返しがちで、ある意味大問題だ」と、睡眠への悪影響を指摘する。

志村兼任講師はリラックスの方法として「筋弛緩(しかん)法」を勧める。体の部分ごとに力を入れ、ぱっと力を抜く動作を繰り返す。毎日続けると緊張をとりやすくなるという。

改善しない場合は、病院受診も検討するとよい。睡眠障害は一般に精神科で扱うことが多い。ただ睡眠相後退障害は精神科医の中でも認知度が低く、診断できる医師が多くはない。このため、睡眠外来や睡眠センターの受診がおすすめだ。日本睡眠学会がホームページで公表している「全ての睡眠障害に対応できる」と認定する病院などを参考にしたい。

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見分けにくく、診断重要

睡眠相後退障害は、同じ睡眠障害の不眠症と違い、一度寝れば十分な睡眠時間が取れるのが特徴だ。朝起きられないのはうつ病などを患っている人にも多い。うつは気分が沈む病気で、睡眠相後退障害の症状とは異なる。ただ、うつと睡眠相後退障害を同時に発症することはあり、それぞれの対処が必要だ。生活に支障をきたす期間が短いと入眠障害や覚醒障害といった診断名になるが、「治療法は基本的に睡眠相後退障害と同じ」(志村兼任講師)という。

睡眠相後退障害に悩む人は10代では数%、成人では0.1~1%ほどいるとされるが、「医療の対象になることがあまり知られていない」(鈴木教授)という。家族など周囲の助けがあれば治療しやすいが、一人暮らしで発症すると、医師への相談や治療につながりにくいので注意したい。

(尾崎達也)

[日本経済新聞夕刊2021年2月17日付]

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