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「1強」が長く続く自民党の真価が問われる局面を迎えている イラスト・よしおか じゅんいち

今年は大きな選挙が続く政治の年である。そのうえ年明けから政治への不満が噴出して、政局の風まで吹き始めた。安倍晋三政権の官邸主導の陰に隠れていた自民党がどう動くのか、正念場を迎えつつある。そこで平成以降の自民党をめぐる状況を描いた書籍を見ておきたい。

長い歴史を持つ自民党なので、とかく昔の話が出てくることも多いが、政治の前提が変わっていることにも注意したい。待鳥聡史『政治改革再考』(新潮社・2020年)は選挙制度改革のほか行政改革や司法制度改革、地方分権など平成の改革を振り返り、何が目指され、何が達成されたのかを検証している。改革の中身に思わぬ矛盾があったり、合わせて実施されるべき改革が欠けていたりして、目指したとおりの結果は出ていないものの、巨大な変化が起こっていることが示されている。

揺らぐ優越的地位

政治状況をマクロの視点から見るには世論調査が欠かせない。項目が共通するアンケート調査を、有権者と政治家の双方に国政選挙ごとに続けてきた、世界的にも希(まれ)な調査の成果である谷口将紀『現代日本の代表制民主政治』(東京大学出版会・20年)を見てみよう。それによれば、自民党は長期的党派性という点で他党を圧倒し、優越的地位にあることが明らかである。ただ、安倍政権下で国会議員の意見が有権者の中心から大きく右にずれていたり、野党の戦略ミスがあったり、その内実には不安があることも示されている。

将来を見据えた新しいメディアの政党による活用については、自民党のメディア対策の実態を解明した西田亮介『情報武装する政治』(KADOKAWA・18年)がある。自民党が戦略的にメディア対応を行って若者への対策を怠らず、この点でも他党に先んじて、若者の自民党支持を高めていることがうかがえる。

自民党の組織や運営については、中北浩爾の『自民党』(中公新書・17年)と『自公政権とは何か』(ちくま新書・19年)が解き明かしている。政権交代の危機に対して、自民党は、集権化とともに、包摂的な党内人事や、伝統的な支持団体への対策の強化によって対応している。また、自民党は自らの力が落ちてきている部分を、公明党との連立でうまく補っている。その際、政策決定にせよ、選挙運動にせよ、自民党のやり方に、上手に公明党を入れ込む形がとられている。こうした自民党の柔軟性と安定性は、その生き残りの秘密であるが、大局的には自民党自身の変化を避けるやり方でもある。

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