高齢者だけじゃない、帯状疱疹 免疫落ちると突然激痛

写真はイメージ=PIXTA
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高齢者に多い皮膚疾患の帯状疱疹(ほうしん)が広い世代で増えている。幼少時の水ぼうそうが原因で、通常は免疫ができて抑えられているが、生活環境の変化で免疫を保てなくなる例が出ている。仕組みを知り予防したい。

いまの大人の約9割は子供の頃に水ぼうそうにかかっている。発疹が現れてから1週間ほどで治るが、病原体(水痘帯状疱疹ウイルス)は「神経節」に潜伏し続け、やがて帯状疱疹の原因となる。

東京慈恵会医科大学の本田まりこ客員教授は「ウイルスは免疫細胞にブロックされ眠っているが、加齢、過労や睡眠不足、がんや糖尿病などの慢性疾患で免疫が低下したときに再び活動し始める」と話す。

最初は、体の片側の皮膚にピリピリとした痛みなどを感じるが、数日から1週間ほどして激痛とともに赤い斑点や水ぶくれが神経に沿って帯状に現れる。水ぶくれは、やがてかさぶたとなり痛みも消える。しかし、高齢者や症状が重かった場合は、慢性的な痛み(帯状疱疹後神経痛)が続くこともある。

「日本や欧米など先進国では、ほとんどの世代で患者が増えている」と本田客員教授は指摘する。要因の一つは生活環境の変化。免疫は20年ほどで弱まるが、これまでは水ぼうそうを発症した子供と接することで再感染が起き、免疫を維持してきた。しかし、核家族化などで子供と接することが減り、再感染する機会が失われているのだ。

2014年に小児への水痘ワクチン接種が定期接種の対象になったことも影響した。千里金蘭大学の白木公康教授は「子育て中の30~40代の患者は少なかったが、子供が水ぼうそうにかからなくなったことで増えた」と解説する。

帯状疱疹は重症化すると帯状疱疹後神経痛の原因となるほか、顔面にできた場合は視力、聴力、味覚などの感覚に影響が残ったり表情筋に麻痺(まひ)が起きたりする。

増え続ける帯状疱疹の対策として登場したのは、罹患(りかん)率が急増する50代以上を対象とした予防ワクチンだ。帯状疱疹の発症予防だけでなく、発症後の重症化や帯状疱疹後神経痛も減らせる。

16年には水ぼうそう予防のワクチンが帯状疱疹予防にも使えるようになった。水ぼうそう用ワクチンは、弱毒化したウイルスを用いる生ワクチンで、50代以降に1回接種する。20年1月には生ワクチンではない不活化ワクチンというタイプの「シングリックス」が登場した。

白木教授は「臨床試験で生ワクチンより優れた効果があったが、2~6カ月の間隔で2回接種する。どちらを接種するか医師とよく相談してほしい」と助言する。

発症したときは、抗ウイルス剤を服用することで重症化や後遺症を防ぐことができる。17年には従来の抗ウイルス剤(アシクロビル、バラシクロビルなど)とは作用が異なり、腎機能が低下した高齢者にも使いやすいアメナメビルも登場した。

大切なのは早めの受診。本田客員教授は「従来の抗ウイルス剤は発疹が出てから72時間以内に服用を始めることが重要とされてきたが、アメナメビルは24時間以内の服用で症状をより早期に回復させることが分かってきた」と話す。皮膚のピリピリ感を感じた段階で皮膚科などで相談したい。また、安静を保ち体を冷やさないことを心がける。発疹や水ぶくれには柔らかいガーゼなどを当てることで症状を和らげるほか、他人にうつすことを予防できる。

帯状疱疹は健康で「まさか自分が」と思っている人でも突然発症する。本田客員教授は「50代以上の人は積極的に予防ワクチンを検討してほしい」という。

(ライター 荒川直樹)

[NIKKEIプラス1 2021年2月13日付]

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