かつて名門と呼ばれた企業が相次ぎ経営不振に陥り、終身雇用が限界に近づきつつあるのを目の当たりにし、「学生は『会社に安定はない』と考えるようになった」。大手商社やメガバンク、広告代理店など、絶大な人気を誇っていた業界は今や鳴りを潜めている。

新型コロナウイルスで先行きが見通しにくいことも影響。「仕事選びで損はしたくない、将来転職するなら可能性は狭めないほうがいいと考える学生は多い」(寺口氏)

実際、コンサル志望の学生たちに選んだ理由を聞くと「コンサルは入社後に学べる機会が多いから」(東大3年の女子学生)、「現時点で特段やりたいことがないし、将来転職するかもしれないので選択肢は多いに越したことはないから」(早稲田大3年の男子学生)などの声が目立つ。

では実際にコンサルを退職し、キャリアチェンジをした人はどうしているのか。

青木ユリシーズさん(28)は国際基督教大を2015年に卒業後、外資系コンサル2社を渡り歩き、現在はフリーランスのコンサルタントと写真家として活動する。専門は企業のサステナビリティー。企業に対して人権問題などSDGs(持続可能な開発目標)に関わる提案をする。

独立したのは自由時間の確保のため。もともと大学時代から趣味で写真撮影の活動を続けていたが、仕事を始めて時間が奪われた。フラストレーションがたまり「フリーランスになるしかない」と思うようになった。

とはいえ「1社のみ所属していただけではフリーとして経験不足だと思った」。そこで新卒で入った会社を3年半で退社し、別の外資系コンサルに転職。1年さらに経験を積み、満を持して独立した。SDGsなど専門知識を身につけたため、仕事に困ることはない。

会社で学んだことは提案書の書き方だという。写真の仕事にも生かされている。重要な情報を適切にまとめ伝えることができるので、相手を説得するのがうまくなったように感じる。年収は会社員時代に比べ2~3割減ったが、写真でも一定の収入を得られ、充実した日々を過ごしている。

働き方改革も

激務といわれるコンサルも変わりつつある。ワンキャリアのランキングで3位だったアクセンチュア。これまで長時間労働が敬遠され「人が採れない状態が続いていた」(人事本部の滝沢明良本部長)。そこで数年前に働き方改革など人事施策を大幅に刷新。長時間労働を撲滅するための短時間勤務制度や人工知能(AI)チャットボットを導入し、残業時間を1日平均1時間に削減した。

ほかにも国内外の募集中のポジションを自由に検索し応募できる制度や会計やマーケティングなど4万を超える研修プログラムを用意した。これら学生ニーズを満たそうとする取り組みが功を奏し、女子学生の人気が急上昇。新卒の応募者数は5年前の5倍に達する。

「VUCA」(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代の今、様々な経験を積めるコンサルに人気が集まるのは必然なのかもしれない。アクセンチュアの滝沢本部長はコンサルを目指す学生に対し、「好奇心を持って過ごしたり、自分とは違うタイプの人と交わったりするなど様々な経験を積んでほしい」と助言する。

(サンローラ茉莉亜、鈴木洋介)

[日経産業新聞 2021年2月10日付]

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