「変化はチャンスである」との思いが深まっている。

三和銀行(現三菱UFJ銀行)時代、川勝堅二頭取が就任した82年から3年間、秘書を務めました。銀行を辞める時、周囲からは「頭取秘書までやったのになぜだ」と怒られたり、引き留められたり。会社を移ってからも毎年会食して近況を報告していましたが、読書家の川勝さんからは「こんな本があるよ」とよく薦められました。

『未来への決断』の「すでに起こっている未来」というくだりが印象的でした。「未来に確実にあるものは不確実だけ」だが、手掛かりになることはすでに起こっている。それを把握しておけば、変化が現実になった時に対処できる。インターネットが登場した当初、その可能性に気づいた限られた人たちが、その後ネットビジネスで大成功を収めたことが良い例です。

社長就任から四半世紀が経過。成長を持続する組織作りが課題に。

エンジニアだった実父は本も好きで、大阪の実家には司馬遼太郎全集や松本清張全集があり、学生時代から面白そうな本を書棚から取り出しては読んでいました。『坂の上の雲』は不朽の名作。何度も読みましたが、経営者の立場になると、近代日本が日露戦争での成功体験ゆえに太平洋戦争の失敗になだれ込んでいく、その道筋が印象的でした。成功体験がはらむ危うさは『組織の盛衰』でも堺屋太一さんが指摘しています。過去の成功に溺れず、硬直化を防ぐことが次なる道を開く第一歩になるのかもしれません。

(聞き手は編集委員 安西巧)

[日本経済新聞朝刊2021年2月6日付]

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