反射力を高めキレ戻す 体に刺激、神経回路を整える
コロナ禍で巣ごもり生活を続け外出やスポーツの機会が減った人も多いだろう。身体への刺激が減れば脳からの神経伝達機能も衰え動作も鈍くなる。ゲーム感覚でできる運動で反射力を高め体のキレを保ちたい。
日ごろ何気なく動いているが、この動作は脳や神経回路によって制御されている。脳は外部環境から五感(視・聴・嗅・味・触)を通して情報を入力し、適応した出力として動作が導き出される。熱いものに触れば手を引っ込め、姿勢を整え呼吸をするのも、伝達を受けた筋肉の所作だ。
こうした動作は600を超える全身の筋肉を協調的に操る必要がある。運動の神経伝達は、大脳皮質など脳領域から脊髄へ情報が伝わり、そこから筋肉へつながる運動ニューロンを通して適切な動作という形で表れる。日々、様々な外的刺激を受けることで、それらの連携はより綿密になり、巧みに緻密な動作ができるようになる。外出自粛で減った刺激を補うため、日ごろ行わない動きに意識的にチャレンジする運動を紹介する。
まずは反射能力をチェックする(1)落としてキャッチを試そう。タオルやハンカチの中央に結び目を作り、目の高さに持つ。そのまま落として膝で結び目をキャッチする。5回のうち3回取れれば平均的な反射力が保たれている。
続いて神経伝達を円滑にする運動。(2)親指・小指入れ替えから始めよう。手を握り右手の親指・小指だけを立てる。その際、小指を反対側の手に付ける。リズミカルに親指・小指立てを左右入れ替える。10回以上間違えずに繰り返すことができればOKだ。
次に(3)一人ジャンケン。右手でグー・チョキ・パーを繰り出し、左手は右手に勝つようにする。リズミカルにグー・チョキ・パーを3回間違えずに繰り返してみよう。
今度は全身を使って(4)手足の「逆」開閉。椅子に座り、手を合わせ、脚を開いて準備。そして腕を開き脚を閉じる。続いて手を合わせ脚を開く。10回繰り返す。最後に元の状態に戻れるようにする。
さらにリズム感を高めるリトミックで脳と身体を刺激する。(5)「肩・上・前・横・下」一つずらしに挑戦したい。椅子に座り右手を肩に添えて準備する。右手を上、前、横、下と動かす。毎回いったん肩に戻るようにする。左手もこの順番で同様に繰り出すが、右手よりも動作を一つ遅らせるのがポイント。1・2・3……と数えながら10回。最後に右手が肩、左手が下になり、元に戻れば成功だ。
できそうでできない程度の刺激こそ有効に働く。立ち上がって、足踏みと合わせると難易度が高まるので、ぜひ挑戦してみよう。
外部からの刺激が減ることは、暮らす上で楽な面もあるが、その分だけ反射力は衰えやすくなる。このような非日常的運動は脳の前頭葉を活発化させる。指は「第二の脳」ともいわれている。
楽器演奏や絵を描くこと、手芸など趣味を楽しむことも有効。子供と一緒に、また、オンライン会議のブレークタイムなどにゲーム感覚で取り入れたい。楽しみながら脳と身体を活性化してみよう。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2021年2月6日付]
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