高齢の父に免許返納を説得するには脚本家、大石静さん

脚本家。東京都生まれ。TVドラマ「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」など執筆。
脚本家。東京都生まれ。TVドラマ「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」など執筆。

両親は鉄道やバスなど交通の便の良い首都圏に住んでいます。高齢ドライバーが起こす交通事故が相次いでいるのを見ると、来年で73歳になる父親にも免許返納を促したいと考えています。うまく説得する方法を教えてください。(東京都・40代・女性)

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池袋で87歳のドライバーが運転する車が暴走し、31歳と3歳の母娘が亡くなった事故以来、世の中が高齢ドライバーは、誰も彼も危険運転をすると決めつけるようになりました。テレビのニュースやワイドショーは、高齢者の免許返納を声高に呼びかけましたが、その報道姿勢に、私はかなりな違和感を覚えました。

なぜなら、高齢者の運転能力には個人差があると思うからです。運転することに何の問題もない高齢ドライバーもいると思うのですが、そのことを忘れて、一律に高齢者は危険だと決めつけてしまうのは、高齢者の人権を侵害すると考えます。

免許保有者10万人あたりの死亡事故件数をみると、70歳から74歳が4.40件であるのに比べて、20歳から24歳が4.58件で、高齢者より多いのです。一方、25歳から29歳は3.44件でした。

この数字を見ると、70歳から74歳の危険度は20代と大きく変わりません。10代の死亡事故発生件数は11.43件とさらに高く、それゆえに自動車保険の掛け金も若いドライバーだと高くなるわけです。

データは警察庁交通局がまとめた2018年のものですが、ネット上でも見られますので、見てみてください。

それでですが、あなたのお父様は、どういう状況なんでしょうか? あなたが助手席に乗っていて、これはコワイ! と思われるような状況ですか? もしそうなら免許は返納された方がいいかもしれませんが、問題なく運転できているなら、返納する必要はないと思います。

都内で交通の便がいいとはいえ、長年車で移動していた人が、その手段を奪われたら、家にこもってしまったり、うつになってしまったりする可能性もあります。自由な行動は人間の根源ともいえる権利だからです。

痛ましい交通事故は一件でも少なくなければなりませんが、高齢者の自由な生き方を侵害することもまた、大きな罪であることを、忘れないでください。

時流に流されて、お父様を追い詰めるようなことがあってはなりません。そのことをいま一度考えていただき、お父様の運転技能だけでなく、性格なども考慮した上で、止むなき場合は別のサポートなども提示しつつ、話し合ってください。

[NIKKEIプラス1 2021年2月6日付]


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