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なやみのとびら、著名人が解決!

会社を退職、欲しいものが買えない脚本家、中園ミホさん

2021/1/23

なやみのとびら、著名人が解決!

なかぞの・みほ 脚本家。東京都生まれ。テレビドラマ「やまとなでしこ」「Doctor-X 外科医・大門未知子」「花子とアン」「西郷どん」「七人の秘書」などを手掛ける。
なかぞの・みほ 脚本家。東京都生まれ。テレビドラマ「やまとなでしこ」「Doctor-X 外科医・大門未知子」「花子とアン」「西郷どん」「七人の秘書」などを手掛ける。

会社員生活に終止符を打ち専業主婦となりました。エコバッグなど買い替えたいものや、洋服や靴など自分のものを、自ら働いて得たお金ではないとの意識が邪魔して買えません。(神奈川県・50代・女性)

◇   ◇   ◇

相談者さんは長年勤めた会社を辞められたとのこと。コロナ禍を背景に会社から迫られての退職か、あるいはご両親の介護などの事情によるものなのか分かりません。

もし退職金が出たのなら、少しぐらいぜいたくをしてもいいのではないでしょうか。我慢が続く時期だからこそ、ごほうびや楽しみがなきゃ、やっていられませんよね。

コロナ禍での自粛生活は我慢を強いられストレスがたまります。パソコンやスマホを眺めていると、AI(人工知能)が分析するのか、自分の趣味や嗜好にあった服などが表示されます。売り手の戦略に乗せられて「ポチッ」としてしまうのですが、買い物ってものすごくアドレナリンがわき出るんです。女性は買い物が大好きですよね。

「自分で働いたお金ではない」という気持ちも、よくわかります。というのも、私には専業主婦の経験はありませんが、出産後に子どもを預かってくれる保育園がなかったので、半年間ほど働けず、収入が途絶えました。未婚の母なので、自治体からいただく5万円程度の児童手当と貯金だけが頼り。元は税金と考えると、かわいいベビー服などを買うのは気がひけました。

私の場合、物欲を我慢すると心がいじけて、仕事をするエネルギーさえ弱まるような気がしました。ようやく仕事を再開して買い物を解禁した日のことは忘れられません。百貨店に直行し、息子のコートとマザーズバッグを買いました。おしゃれした息子をバギーに乗せ、バッグを肩にかけて街を歩くと、ウキウキと晴れがましく、誇らしい気持ちになりました。

相談者さんのために、あのウキウキした喜びをほかに味わえるものはないか考えてみました。例えばスポーツで体を動かす、好きなドラマにハマる……。どれも心地良いけれど、「自分で働いたお金で欲しいものを買う幸せ」の代わりにはなってくれないような気がするのです。代わりのきかない幸福感や充実感なのかもしれません。

事情はどうあれ、落ち着いたら仕事を再開してはいかがでしょうか。50代なら気力も体力も十分のはず。チャンスが巡ってきたら、ぜひ働いてほしいと思います。

一生懸命働いて得たお金で欲しい物を手に入れるのは、何にも代えがたい幸せ。その喜びをまた感じていただきたいです。

[NIKKEIプラス1 2021年1月23日付]


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