炊飯器や電気ケトルをテーブルに 囲炉裏感覚で暖かく
生活コラムニスト ももせいづみ
日増しに寒さがこたえるこんな季節には、鍋料理がうれしい。準備も簡単だし、食卓で調理をすることで室温だけでなく部屋の湿度も上がる。一般的に湿度が10%から15%上がると、体感温度が1度上がるといわれているので、冬を暖かく過ごすためにもテーブル調理を積極的に取り入れたいもの。
とはいえ、毎日鍋ではさすがに飽きてしまうので、私がオススメしたいのが「冬は調理家電の置き場所を変えちゃえば?」という、ちょっと変わった提案。例えば、炊飯器がキッチンにある家庭なら、冬の間はダイニングテーブルに移動させてしまうのはどう?
炊飯の蒸気と熱で周りが暖かくなるだけでなく、そのまま食卓でごはんをよそうことができるから配膳もラク。朝食用にタイマー設定して寝れば、朝の冷え切ったダイニングにほんのりと炊飯の湯気が漂ってくれる。
ほかにも、電気ケトルやホットプレート、卓上のIH調理器などをダイニングテーブルに置いて、囲炉裏感覚で食卓をキッチンのように使ってみる。夏にキッチンがうだるように暑いのは、調理の熱と蒸気のため。これを冬は逆手に取ってしまおうというわけ。
朝は電気ケトルとホットプレートをセットしたテーブルに、卵やソーセージなどを用意して好きなように調理して食べる。ホットプレートでパンも焼けるし、残りご飯をおにぎりにしておいて、焼きおにぎりのように温めてもおいしい。ケトルのお湯でカップスープでも作れば立派な朝食。準備の手間が省けるし、何より熱源を囲んで暖かい。
卓上型のIH調理器を置いて、味噌汁はテーブル調理にするのもいい。鍋が煮えるのを誰かに見守ってもらいながら、仕上げの味噌も溶き入れてもらおう。
炊飯器も食卓で使えば、あとはおかずを並べるだけ。配膳もラクで、その間ずっとほかほかと暖かい。つまりこれ、ダイニングテーブルの囲炉裏化計画といってもいいのでは?
囲炉裏は暖房の役目だけでなく、調理の場としても活用されてきた。コトコトと鍋が煮えるのを待ちながら、囲炉裏を囲んでおしゃべりをするのもだんらんのひとつの形だったように思う。そうして囲炉裏を囲む人が煮炊きを見守ってくれたら、食事の準備をする人もラクになるし、配膳も自然と手分けするようになる。
いつも当たり前のように使っている道具の置き場を変えてみるだけで、ちょっとラクになったり面白くなったり。コロナ禍で家で過ごす時間が増えそうな今年の冬。いつもとちょっと違ったしつらえで、家族で食卓を囲みながら暖まってみるのも楽しそう。
調理後は湿気や油分、においを含んだ空気の換気もお忘れなく。結露防止のためにも、夜は特にきちんと換気してから就寝してね。
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。新刊に「お弁当にスープジャー」(辰巳出版)、「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2021年1月19日付]
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