同じ会社で働き続けるのがつらい漫才師・作家、山田ルイ53世さん

やまだるい53せい 1975年兵庫県生まれ。愛媛大学中退後に上京し、芸人の道へ。99年、ひぐち君と「髭男爵」結成。2018年には月刊誌連載の「一発屋芸人列伝」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞。
やまだるい53せい 1975年兵庫県生まれ。愛媛大学中退後に上京し、芸人の道へ。99年、ひぐち君と「髭男爵」結成。2018年には月刊誌連載の「一発屋芸人列伝」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞。

新卒から同じ会社で働いていますが、あと数十年続くと考えるとしんどいです。出世欲もありません。困難や叱責を避けて仕事人生を終わりたいです。組織や社会に適合できないのでは? 不安です。(大阪府・30代・男性)

◇   ◇   ◇

ずっと同じ会社で働くことを想像し、しんどいと嘆く相談者。「出世は望んでない」と一見控えめですが、「困難は避けたい、怒られたくない」となるとどうでしょうか。

“パワハラ”のようなケースは論外として、“怒られない”ための最善策は仕事で成果を残すこと。手柄をあげればおのずと出世してしまうので、ご希望とは反しますが、上司に小言を並べたてられる場面は減るでしょう。しかし、今度は「あいつは有能!」と期待され、より困難な案件を任されるかもしれません。

首尾よくこなせばおとがめなしですが、「自分には荷が重い……」と避けてばかりでは、そのうち大目玉をくらうことに……ともはや何かのパラドックス。アキレウスもカメも真っ青です。

いうなれば、「ちっともおいしくないですが、お安くしますので、クレームはご勘弁!」とメニューにただし書きのあるレストラン。しかもオーナー……相談者は、この経営方針の下“あと数十年”続く老舗を目指すのだと仰る。

今のご時世、そうやすやすとはいかない気もします。いや、偉そうに書きましたが、筆者も似たようなもの。特に「適合うんぬん」については、その道の権威といっても過言ではない。

中2の夏に不登校となり、そのまま6年間“引きこもり”。大検を取得して地方大学に潜り込むも、ある日夜逃げ同然で上京します。「お笑いの養成所に入る!」という名目はありましたが、一度社会から滑落し、「人生が余ったな……」という虚無感にとらわれていたので、「絶対売れてやる!」といった若者らしい野心や気概はゼロ。

10年近く前、一瞬日の目を見ましたが、人付き合いに疎く、芸能界の華やかな交遊録などとは無縁で、「タレントに向いてないな……」とため息を吐く毎日です。かように“適合”とはほど遠い、自称貴族の一発屋ですが……まあ、なんとかやっています。

何も、前を向き、切り開いていくだけが人生ではない。筆者などは、棺おけに無事たどり着くまでの逃走劇だとさえ思っています。ただ、どの業界であろうと「飯を食う」のは楽なことじゃない、というのも事実。「食い方」までこだわるならなおさらです。

相談者は30代と若い。出世するという“逃げ道”があるのも忘れないでください。

[NIKKEIプラス1 2021年1月16日付]


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