アイデア勝負、私だけの一着に 服のリメークに挑戦
衣類を長く使ってごみを減らすため、リメークする「アップサイクル」に注目が集まる。不器用で家庭科では"劣等生"だった記者(24)にもできるやり方があるそうだ。
衣類のごみが問題視されるようになり、ステイホームで裁縫を始める人も増加。形はそのままでサイズやデザインに手を加えるメンディング(修繕)、新しい形に作り替えるリメークにも関心が集まり始めた。
「リメイクしたらオンリーワンができました。」などの著書がある津田蘭子さんを訪れ、教えてもらった。
まずは衣類をリメークするか、津田さんの監修で仕分け。「形のシンプルさと衣類の大きさがポイント」(津田さん)。飾りがなく、生地を大きく取れる簡素な作りのものがお薦めだ。レース生地の衣類などは切り分けや縫いが難しくリメークに向かない。
津田さんの著作を参考に、カットソーとデニムジーンズをヘアバンドとエプロンの「お掃除コーデ」にリメークすると決めた。カットソーは伸び縮みしやすい生地、デニムジーンズは形を生かす。型紙いらずで、切って縫い合わせるだけ。家庭科の授業では大きな布から形を整える難しさがあったので、楽そうだ。
裁断にあたり、柔軟な伸縮と着心地のよさ、シルエットをきれいに見せるためのタックなど良さを再認識した。「服の作りや仕組みを実感でき、リメークを繰り返せば独自のアイデアも浮かびます」(津田さん)。
ヘアバンドやデニムの縫い合わせにはミシンを使う。持っていなくてもレンタルなら3泊4日で4千円程度から。基本の縫いができるものだけでなく、刺しゅうができるコンピューターミシンもある。
ミシン針や糸は、生地に合わせたものをそろえる。「作品の持ちが違います」(津田さん)。カットソーにはニット用ミシン糸やジーンズにはデニム用、といった具合だ。手芸用品店で購入できる。迷ったら店員に聞くとよい。
ミシンを使うのは高校生以来。糸の通し方やボタンにピクトグラムがふられており、わかりやすい。返し縫いもボタン1つ。足踏みミシンを使ったが、車の運転のようにスピードを調節しやすかった。
ヘアバンドは縫い目を隠すための飾り部分を軽く手縫い。ざっくり縫ってもよいが、玉留めはしっかり。「留めたいところと針を近づけて糸を巻き付けるように」と津田さんがアドバイス。エプロンのひもを通すのにハトメという工具を使った。ホームセンターで買い求められる。
完成して身につけた。ヘアバンドは採寸したので気持ちよく使える。エプロンのウエストはジーンズのウエスト部分だからぴったりだった。
服の形はそのままに、手直しして使うメンディングはどうか。「デザインを変えると目新しさを感じながら使い続けられます」。SNSなどで修繕する方法を発信するMend It Mine代表の杉浦由佳さんは話す。
100円ショップの手芸用品や飾りを使い、デザインを変えたり、穴をふさいだりするのが手軽だそう。例えば上着のボタン部分。よれたボタンを取り、市販のバックルを上からかぶせれば、見ばえも変わって気分も一新する。
色あせていても着られそうなら余りのボタンや刺しゅう糸を使ってデザインを変えてみよう。杉浦さんもメンディングを始めたのは1年前。「元のデザインを縁取るだけの刺しゅうなら手軽でした」と話す。
裁縫は手作業が多く苦手意識があったものの、アイデア次第だと感じた。リメークやメンディングを試しつつ、オンリーワンのおしゃれ着を探ってみても面白そうだ。
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企業、自社製品で取り組み
アパレル企業も自社製品を長く使う取り組みに積極的だ。ファーストリテイリング傘下のユニクロでは、顧客が使い終わった自社製品をリサイクルする「RE.UNIQLO」を2019年秋からスタート。各店舗に回収ボックスを設け、リサイクルした商品を作る。これまでに回収した衣類は国内だけで62万点。20年11月にはリサイクル第1弾のダウンジャケットを発売した。
アウトドア製品を提供するパタゴニアは「Worn Wear(ウォーン・ウェア)」を進める。服をそのまま長く使えるよう、サイト上で写真を交えながら紹介。コロナ禍前には各地を訪れ、衣類の修繕を対面で行う場も設けていた。環境負荷の高いアパレル業界が変われるよう、消費者のよりよい購買姿勢を促す。
(田中早紀)
[NIKKEIプラス1 2021年1月16日付]
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