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顧客の本音を引き出し、納得させる情報提供が営業のカギ

顧客の本音を引き出し、納得させる情報提供が営業のカギ

コロナ禍で在宅勤務が普及し、住まい環境を見直そうと戸建て住宅の需要が増えている。ハウスメーカー各社の営業マンが顧客獲得に向けて営業手法の工夫を迫られる中、大和ハウス工業には社内営業成績が九州地区1位、全国2位を誇るすご腕営業マンがいる。マリナ通り展示場(福岡市)店長の鬼塚光さんだ。

鬼塚さんが営業で意識するのは顧客との信頼関係。そのため、顧客から本音を引き出すすべと納得させる営業手法が必要だという。

営業では強引な営業トークは決してしない。「展示場に来る顧客は最初警戒心を持っている。いきなり売り込むと(顧客が)逃げてしまう」。まずは現在の住まい環境や生活状況、家族構成などを聞き、雑談に徹する。顧客との距離を縮め、会話で希望価格帯や住まい環境の需要などを自然に聞けるようにする。

工夫はほかにもある。顧客に価格や住宅の特徴を説明する際は、タブレットで自社や他社のウェブサイトを見せながら、各社の特徴を比較し説明する。各サイトには価格帯や自社サービスの特徴などの基本情報が掲載されている。顧客が情報源を知ったうえで、分かりやすく説明を受ければ、納得しやすくなる。自作資料と比べ、サイト上の情報なら顧客自身が簡単にアクセスできる利点もある。「お客さんにも家のことを理解してもらうため」あえて自作資料を使わず、説得ではなく、納得してもらうのが信条だという。

鬼塚さんは学生時代、5年間ガソリンスタンドでアルバイトした経験がある。勤めていた店舗では営業成績が社内トップに立つこともあった。客層は常連のリピーターが中心のため、顧客との信頼関係は常に意識していたという。

ただ、ハウスメーカーの顧客は一期一会のうえ、取引金額も大きい。入社後は営業手法の違いにギャップを感じたこともあった。転機は入社5年目の時。70代の夫婦を顧客に持ち、戸建て住宅の契約寸前までいったが、契約日前日に断りの連絡が鬼塚さんに入った。

「もう会わなくていい、他社に決めた」と言われた。理由は分からないが、それでも鬼塚さんは顧客の家まで足を運んだ。売り込みではなく、担当者として自分の思いを改めて伝えると、契約を獲得した。「サッカーでいえばアディショナルタイムにゴール。最後は顧客との信頼関係が契約獲得につながった」と話す。

コロナ禍での新たな営業手法として、オンラインを活用した営業も始めた。対面型と比べ、資料の見せ方や説明の仕方が難しくなるため、より周到な準備が必要だという。「商談中に資料探しで顧客に待たせるのは信頼関係を損なう」と鬼塚さんは強調する。

コロナの影響で春先は展示場の客足が遠のいたが、6月以降は家族層や富裕層が戻り、同店の2020年4~9月期の営業成績は前年同期を上回った。店長を務める今、鬼塚さんは店舗統括や後輩育成を担いながら「個人の成績だけでなく、店の成績でも全国トップを狙う」。

(松本晟)

[日経MJ2021年1月11日付]

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