煮物や漬物が変身 余った食材でお手軽グラタン
煮物や漬物、刺し身など、少しだけ余った食材が冷蔵庫に眠っていないだろうか。そんなときはグラタンやドリアにしてみよう。いつもの味を冬にぴったりのごちそうに変身させるコツを2人のシェフに教わった。
まずは煮物。今回はお正月によく作るお煮しめ(筑前煮)をグラタンにしてみたい。訪ねたのは東京・渋谷で「かしわビストロ バンバン」を営む高城直弥さんだ。
ケチャップなど 洋風調味料合う
「和風総菜は洋風調味料やスパイスを加えることで、ホワイトソースとよくなじむ」。そう話しながら高城さんが取り出したのはケチャップ。1人分の筑前煮を大さじ2程度のケチャップであえてグラタン皿に入れ、上からホワイトソースとチーズをかける。
残った餅やパンがあれば、一緒にのせてオーブンで焼くと、モチモチ、カリカリとした食感も楽しめるという。食べてみるとホワイトソースにトマトの酸味が加わり、レンコンやこんにゃく、餅などさまざまな歯応えもある、飽きのこない味わいとなった。
次に高城さんが手にしたのは漬物だ。これも少しだけ冷蔵庫に余りがちな食材だろう。一見、ホワイトソースとは合いそうにないが、ドリアにするという。
福神漬け、たくあんなどを細かく切り、カレー粉、マヨネーズであえる。「お弁当に使った余りの冷凍唐揚げやベーコンがあれば、プラスすると満足感が出る」と高城さん。耐熱皿にごはんを敷き、ホワイトソース、あえた漬物、鶏の唐揚げの順にのせ、ホワイトソースとチーズをかけてオーブンで15分ほど加熱。
漬物の酸味とカレー粉のスパイシーさが、やさしい味わいのホワイトソースの絶妙なアクセントとなり、ひと味違ったドリアが完成した。焼き上がりに卵黄をのせればカルボナーラ風になり、さらにコクが増す。
最後は刺し身だ。「白ワインや料理酒でソテーすると、ホワイトソースと抜群の相性になる」と高城さんは話す。イカや貝類などもOKだが、青魚はクセが強いのでおすすめしないそう。「そのままチーズをかけて焼いてもいいが、ひと手間かけるとごちそうになる」(高城さん)。使うのは春巻きの皮だ。
ソテーした刺し身にホワイトソースを加えて混ぜ、中身が出ないように春巻きの皮で包む。耐熱皿に入れ、チーズをのせて焼き色が付くまでオーブンで加熱する。パリパリに焼けた皮にナイフを入れると、とろりとした魚介のホワイトソースがあふれ出し、パーティーにも合いそうなおしゃれな1品に仕上がった。
レンジで簡単に ホワイトソース
ここでホワイトソースについてもアドバイスをもらった。高城さんのおすすめは「小麦粉、バター、牛乳、塩の割合が1対1対10対0.1」。お店では小麦粉をバターでじっくり炒め、温めた牛乳で丁寧にのばしていくが、今回は自宅でも手軽に作れるように、高城さんおすすめの割合を参考に、電子レンジを使ってソースを作ってみよう。
小麦粉30グラムとバター30グラムをレンジ(600W)で1分半~2分加熱して溶かす。泡立て器でよく混ぜ、牛乳300ミリリットルを加えてさらに混ぜる。レンジで再び1分半ほど加熱し、中心が固まり始めたら取り出して、全体がなめらかになるまで混ぜる。
最後にもう一度レンジへ。吹きこぼれないようにときどき取り出して混ぜながら2~2分半ほど加熱して完成だ。塩、こしょう、あればナツメグで調味する。塩は高城さんの割合では3グラムだが、お好みで。これで約2人分だ。
ドリア発祥の地としても知られるホテル ニューグランド(横浜市)の総料理長、宇佐神茂さんは、ホワイトソースをふんわりと仕上げるコツを教えてくれた。
「ホテルではホワイトソースを丁寧に布で漉し、仕上げに卵黄で作るオランデーズソースを加えています」(宇佐神さん)。家庭でも、ホワイトソースにとろりとするまで泡立てた卵黄を合わせ、具材とあえて焼くと、スフレのようにふんわりとした食感になるという。
ドリアのごはんにもワザがある。洗った米を30分以上ザルに上げ、しっかり水気を切り、バターで炒めてから炊く。パラッとしたバターライスになり、ホワイトソースとの相性がよりよくなるそうだ。
いろいろな食材との組み合わせに挑戦し、我が家だけの傑作グラタン作りにチャレンジしてみよう。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEIプラス1 2021年1月9日付]
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