リンゴ丸々使った存在感 青森・弘前のアップルパイ

リンゴの存在感に圧倒される「対馬菓子舗」の商品
リンゴの存在感に圧倒される「対馬菓子舗」の商品

青森県弘前市はリンゴ生産量日本一の市町村。身近に新鮮なリンゴがあるため、市内にはアップルパイを販売する店舗が多い。弘前観光コンベンション協会の調べでは市内に50店程度あるという。洋菓子店や和菓子店、喫茶店、パン店など提供店が幅広いのが特徴だ。たくさんの個性あるアップルパイを楽しめるのがリンゴの街、弘前だ。

街中ではアップルパイをあんどんに使ったタクシーも走る

アップルパイが目当ての観光客も珍しくない。「おいしいアップルパイの店を教えてほしい」という観光客が十数年前から増え始めたため、同協会は青森県産リンゴを使ったアップルパイを出す店と商品を紹介する「弘前アップルパイガイドマップ」を作製。掲載許可を得た40店以上を取り上げている。味を「甘み」「酸味」「シナモン」の3つの指標と100字程度の短文で説明。新型コロナウイルス禍の折、通信販売で購入できる店も案内している。

「フランス食堂シェ・モア」はリンゴ丸々1個を真空調理する

弘前市役所岩木庁舎の近くの岩木山に向かう旧道沿いにある創業約80年の菓子店「対馬菓子舗」。ここの商品はリンゴの存在感が半端ではない。洋菓子職人でもある3代目の對馬理之社長は「弘前のアップルパイなら、リンゴ自体を味わってほしい」との思いから、一般的なパイの形とは違う独自のパイを開発した。

一辺が約9センチメートルの正方形で、厚さが2~3ミリメートルの極薄の生地に、少量のカスタードクリームと大きく切ったリンゴ4つがのる。リンゴの品種は「ふじ」。白ワインとシロップで煮ているが、甘すぎない。サクサクの極薄生地とリンゴがマッチするのが心地よい。リンゴの果汁感も十分だ。リンゴたっぷりの「紅玉タルト」も和菓子の味わいがあり、同店の看板商品だ。

弘前駅から近い「フランス食堂シェ・モア」はリンゴを切らず、皮もむかず、丸々1個を真空調理する。品種は「紅玉」を使用。皮の色素を果肉に浸透させ、ピンク色に仕上げた美しいパイだ。こだわりは「生地2種類とアーモンドクリーム、カスタードクリームを使い、リンゴの芯をくりぬいてクリームチーズを詰めた」(福沢円料理長)。クリームチーズとの相性がよく、フランス料理の一品のように重厚な酸味と甘さを感じられる。サイズが大きいので、2人でシェアできる。

弘前公園の近くの藤田記念庭園。庭園内の洋館に弘前観光コンベンション協会が運営する「大正浪漫喫茶室」があり、5~6種類のアップルパイを楽しめる。コロナ禍が収まったら、風情ある庭園でゆっくりと味わいたい。

<マメ知識>名店案内タクシーも
各店を短時間で巡りたい人は「アップルパイタクシー」(北星交通)を利用するのも手だ。アップルパイコンシェルジュ「桜こまち」が運転手を務めて案内する。コンシェルジュは弘前観光コンベンション協会が作成した試験に合格している。試験に向けてリンゴ栽培について学習。約50店のアップルパイを食べ、有名店のパイ製造工程も学んだスペシャリストだ。ガイド付きで通常のタクシー料金よりも割安。店によって売り切れの場合もあるので、確認してから来店した方がいい。

(青森支局長 山田伸哉)

[日本経済新聞夕刊2021年1月7日付]

注目記事