インフレにならないからといって財政支出をどんどん拡大すると、効率性の低い投資が増え、経済の成長力を下げるという懸念もあります。

もっともMMT論者も無意味な投資を容認しているわけではなく、ケルトン氏は「国民にとって、バランスのとれた公平な経済を実現するために予算が使われているか」を重視する姿勢です。

――MMTは極論なのでしょうか。

専門家の間では「極論だが傾聴すべき要素もある」(みずほ総研の門間氏)との声もあります。「日本で長い間財政赤字を膨らませても、インフレや金利上昇が起きなかった事実を踏まえれば、財政活用の余地は従来考えられていたよりは大きそうだ」との見方です。日本では、金融政策が限界に直面していることも踏まえた意見です。

米国でMMTが関心を集めるようになった背景のひとつは、社会問題化している行き過ぎた格差の拡大でしょう。日本にも言えることですが、例えば所得の低い層もカバーするような教育への投資は、格差是正に効果があるかもしれません。

また、自然災害の多い日本では、その防止に本当に有効であれば国土強靱(きょうじん)化などのインフラの強化も意味を持ちそうです。ただ財政政策では、極論を選択する前に、分野や事業ごとに投資効率の高い「賢い支出」を選別することが極めて重要であると考えます。

ちょっとウンチク

元手なしで融資 可能との説も

銀行が融資する際に預金という元手は不要――。MMT論者のランダル・レイ米バード大教授は著書でそんな趣旨の説明をしている。常識とは異なる印象だが、実は「主流派」の学者にも「現金引き出しへの備えなどのため預金受け入れは必要だが、融資自体はお金がなくても可能」(共立女子大の植田教授)との見方がある。

銀行が1億円を貸す場合に相手が持つ自行の口座に1億円と記帳さえすればいい、実際に預金を原資にする必要はない、ということだ。むろん、そうであっても銀行はいくらでも貸せるわけではなく、資金需要の存在が融資の前提だ。

(編集委員 清水功哉)

■今回のニッキィ
 菅原 直美さん 宅地建物取引士の試験を受験するため、準備に余念がない。自分の知識を増やそうという思いから、様々な勉強に取り組んでいる。「これもステイホーム効果かもしれません」
 石川 雅子さん コロナ下で、体力づくりのため始めたジョギングが習慣となり、夏も冬も続けられている。走ったことなどなかったのに思いのほか楽しく「自分で自分をほめてあげたい」。

[日本経済新聞夕刊 2020年12月28日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。


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