高級ラインで攻め続ける デジタル化で逆風に勝つセイコーホールディングス 中村吉伸社長

コロナ下で時計業界が逆風にさらされている。主力の高級腕時計ブランド「グランドセイコー(GS)」を独立ブランドにして、高価格帯を強化してきたセイコーホールディングス(HD)だが、2020年4~9月期の連結営業利益は15億円の赤字となり厳しい状況だ。中村吉伸社長は回復の芽は高級品にあるとみて、「攻めの姿勢」を崩さない。

高価格帯商品の専用工場を開設

――コロナで国内の販売状況はどうなっていますか。

「時計を買おうというマインドの戻りは遅いですね。消費者はお金は持っていると思いますが、旅行に行きたい、おいしいものを食べたいとの思いが先行しています。当社は高価格帯にシフトしてきましたが、コロナ以降、高級品の主要顧客であるシニア層が外出を控える傾向があります。都心の百貨店や家電量販店での販売が振るいません。一方で郊外に目を向けると善戦しています」

――コロナ前はどのようなことに注力してきましたか。

「高価格帯へのシフトです。2017年にGSを『セイコー』ブランドから独立させました。それまでGSはセイコーの高価格帯との位置づけでした。高価格帯は売り方が全く違い、売り場に並べているだけでは理解されません。攻めの姿勢で様々な施策を打ってきました」

「米国ではGSを専門に扱う会社を立ち上げ、人材も外部から引っ張ってきました。国内ではGSのものづくりの理念をアピールするため今年7月、岩手県雫石町の腕時計生産拠点である盛岡セイコー工業にGS専用工房『グランドセイコースタジオ 雫石』を開設しました。建築家の隈研吾さんが設計し、自然と共生する木造建築です」

「東京・銀座の和光本館の1、2階も改装しました。特に2階はGSのブランドストーリーや歴史が全てわかるようにしました。オーダーメードのGSを作るサービスも始めました。ほかにも創業者の服部金太郎の歴史などを知ることができる『セイコーミュージアム』を銀座に移しました」

――ライバルとしてスイスの高級時計メーカーを意識していますか。

「向こうはどう思っているかわかりませんが、追いつけ追い越せとの思いでやっています」

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アップルとの競合は避ける