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開発経済学や国際協力業務を紹介する本の刊行が相次いでいる

世界経済が発展するにつれ、1日に1.9ドル未満で生活する「貧困者比率」は過去30年間で大きく下がってきた。それでもサブサハラ・アフリカをはじめ、世界各地にはなお貧困や保健衛生の問題に苦しむ数多くの人々がいる。そうした現場で支援や調査活動を続けてきた専門家たちの訴えには重みがある。

開発コンサルタントという仕事』(2020年10月、日本評論社)の著者、笹尾隆二郎氏は1990年代後半から開発コンサルタントとして日本政府の開発援助事業に携わってきた経験をもとに、国際協力の仕事を具体的に紹介している。

同書は多国間協力と2国間協力、日本の政府開発援助(ODA)といった国際協力の基本から始まり、国際協力にはどんな人たちが関わっているのか、その中で開発コンサルタントはどのように仕事を受注し、実行しているのかを図表を交えて平易に説明している。後半には、仕事に必要な資質とキャリア形成を示した章もある。「貧しい人々の生活を改善したり、何らかの困難を抱えている人々の問題を解決、あるいは緩和したりすることに貢献できる喜び」を強調する著者は、若い世代の人たちに開発コンサルタントを目指してほしいとの願いを込めて同書を執筆した。

大塚啓二郎著『なぜ貧しい国はなくならないのか・第2版』(日本経済新聞出版、20年3月)は、長年、開発経済学の研究に取り組んできた成果を土台にしている。農業と製造業の双方を対象にアジアとアフリカで現地調査を重ねてきた著者は「現地を訪問すれば、所得が低く、貧困であることが、どれほど厳しいことかを身にしみて感じることができる」と記している。同書によると、開発経済学とは、貧しい開発途上国の貧困削減に貢献する戦略を研究する学問分野。第2版には初版(14年)の発刊後の研究成果を反映させ、新しい議論を追加した。様々なデータを活用して貧困の構造を解き明かし、途上国が「してはいけないこと、しなくてはいけないこと」を提唱している。

新型コロナウイルスの感染拡大は、開発援助にも多大な影響を及ぼしている。笹尾氏も海外に渡航できなくなり、個々のプロジェクトでは遠隔で現地とやり取りし、何とか動きを止めないようにしているという。「単に我慢するのではなく、今だからこそできることにチャレンジしていきたい」という言葉は途上国の人々にも響くのではないだろうか。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2020年12月19日付]

開発コンサルタントという仕事

著者 : 笹尾隆二郎
出版 : 日本評論社
価格 : 1,980 円(税込み)

なぜ貧しい国はなくならないのか(第2版)

著者 : 大塚 啓二郎
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 3,300 円(税込み)

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