そのため中国版のツイッターである「ウェイボ」や、動画配信サービスの「bilibili(ビリビリ)」、動画投稿アプリの「TikTok(ティックトック)」など、あらゆる媒体に毎日投稿を続け、商品を総合的にアピールしていく必要がある。

さらに消費者の属性によって見る媒体が違ったり、新しい媒体が登場したりするため、現地の情報をより早く、きめ細かく収集する作業が欠かせない。

17年に中国向けの越境EC事業を始めた当初は、社内にこうしたノウハウの蓄積はなかった。甘さんはSNSへの投稿について「関係部署で内容を入念にチェックし、一つ一つ上司の許可を得てから配信していたのでは遅い。競合他社に差を付けられる」と繰り返し警鐘を鳴らした。

医薬品の効能に関する表現などは担当者と念入りに確認するが、SNSの投稿内容そのものは基本的に甘さんに任されている。上司にあたる営業本部国際課の伊藤和人課長も「中国のEC市場については、甘さんが社内で誰より知っている」と信頼を寄せる。

甘さんのスマートフォンには対話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」で、ひっきりなしに連絡が届く。中国で提携しているPR会社がSNSなどに投稿する動画の承認を求めてくるのだ。以前は中国向けも日本のPR会社に頼っていたが、19年から現地企業に切り替えた。

この10月、龍角散の中国市場での越境EC取扱高は前年同月実績(2100万円余り)の約5.5倍、1億2000万円近くに拡大した。

当初は甘さんが孤軍奮闘していた中国向けの営業も、現在は中国出身の2人の社員が加わり、手分けして取り組めるようになった。甘さんは米国在住の中国人向けなどにも同様の販促を手がける。

「自分も気に入っている龍角散の商品を、中国の消費者が高く評価してくれる瞬間にやりがいを感じる」と甘さん。「営業の仕事は勉強の連続。予期せぬトラブルもあるが、人生が豊かになる」と笑顔で話す。

(茂野新太)

かん・ろ
 2017年龍角散に入社。国内市場向けの営業で経験を積むかたわら、中国向け越境ECでの営業を開始。営業本部国際課に所属し、現在は米国や香港へのプロモーションも担当。北京市出身。

[日経産業新聞 2020年12月18日付]


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