皮膚の「できもの」正しく対処 痛みだけで判断しない
皮膚の「できもの」には、ウイルスや細菌が原因でできるものや、老化によるケースなど様々ある。炎症で気づく場合がある一方、痛みやかゆみはないが命に関わる悪性腫瘍もある。正しく区別し対処したい。
皮膚にできるできものは、炎症性と腫瘍性に分けられる。炎症性は主に細菌感染が原因となり、「おでき」と呼ばれる毛嚢(もうのう)炎や、にきび、化膿性汗腺炎などがある。炎症によって、腫れや痛みを伴うことが多い。
にきびは、顔の毛穴が皮脂で詰まり、細菌が繁殖して炎症を起こす。化膿性汗腺炎も毛穴に炎症を起こすが、脇の下や足の付け根、お尻などで発生する。炎症を起こすと、にきびより重症化する。
炎症性の場合、いずれの疾患もまずは抗生物質の外用薬を塗布する。症状が重ければ内服薬を使う。それでも炎症が激しくなり膿がたまるなどした場合は、切開など外科処置を行う。
腫瘍性の皮膚疾患には良性と悪性がある。良性腫瘍の代表的なものには、ほくろやいぼ、皮膚の下で脂肪細胞が腫瘍化した脂肪腫などがある。その他、顔や首などの皮膚の一部が石灰のように硬くなる石灰化上皮腫(子供に多い)などがある。
基本的に良性腫瘍は腫れや痛みを伴うことは少ない。生活に支障がなければ、そのままにしておいて問題ない。
ただ、良性腫瘍のなかで注意が必要となるのが粉瘤(ふんりゅう)だ。症状に応じて積極的な治療が欠かせない。粉瘤は皮膚の下に袋状のものができ、そこに皮脂や垢などの老廃物がたまる疾患だ。
はなふさ皮膚科(東京都三鷹市)の花房火月院長によると「この袋が破裂して内容物が袋の外に漏れ出ると炎症が起きる」。痛みが生じ、異臭を放つなどすれば治療が必要になることもある。
粉瘤は簡単な手術で取り除くことができる。「放置して大きくなる前に除去するのが望ましい」(花房院長)。粉瘤全体を切り取る切除法と袋のみを最小の切開で除くくり抜き法があり、いずれも健康保険が適用される。
いぼや、ほくろは症状がなくても気になるところだ。日本医科大学付属病院(東京・文京)の帆足俊彦医師によると「見た目の問題で、いぼやほくろの除去を希望して来院する人も多い」という。慎重な対応が欠かせず、必要性を吟味した上で手術する。
皮膚の老化によっても、できものができる。代表的なのが脂漏性(しろうせい)角化症(老人性いぼ)だ。ウイルスではなく加齢が原因となる。
最も気をつけなければならないのが悪性腫瘍だ。毛穴を構成する細胞などにできる基底細胞がんや、表皮で発生する有棘(ゆうきょく)細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)などの皮膚がんだ。放置すると有棘細胞がんに移行する日光角化症も悪性腫瘍の一つ。紫外線を浴びやすい顔面などにできる。「急に大きくなった、周囲との境界が不明瞭、出血が見られるなどしたら、早期の受診が欠かせない」と帆足医師は注意を促す。
悪性腫瘍の疑いがあれば、まず皮膚の一部を採取して病理検査を行う。診断が確定したらコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)で画像検査を行うなど、他の臓器への転移がないかも調べる。
治療では外科的手術による切除が中心となり、腫瘍と周辺の皮膚を切除する。症状によっては放射線治療や薬物療法も行う。
帆足医師によると「医師でも見ただけでは、良性か悪性か見分けがつきにくい腫瘍もある」という。一般の人では判別は難しいので、気になるできものは、早めに皮膚科で診てもらうのが賢明だ。
(ライター 仲尾匡代)
[NIKKEIプラス1 2020年12月19日付]
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