妻がストレス感じぬ家事手伝いは?
作家、石田衣良さん
妻が体調を崩しているとき、何をどこまでしたらいいのか戸惑いがあります。妻の立場なら、夫に任せるのもプライドが許さないのではないか。妻にストレスを感じさせず、家事を手伝うにはどうしたらいいでしょうか。(兵庫県・60代・男性)
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夫が家事にどの程度参加すべきか。相談者くらいの年代の家庭にとって永遠に解けないテーマです。共働きと専業主婦では割合が違うだろうし、子どものあるなしや成長具合によっても変わってくる。夫も相方の顔色をうかがいながら、落としどころを探っていくしかない超難題なのです。
ひょっとすると冷戦構造が残る東アジア外交より、ずっと微妙で困難な綱渡りかもしれません。いやあ、夫というのは大変な役回りですね。
相談者は妻にも家事に対するプライドがあるから、どの程度手伝えばいいか迷うと言いますが、心配無用だと思います。気がついたらどんどん手を出して、奥さんの家事負担を軽くしてあげてください。体調不良のときなど、全く遠慮することはありません。弱っているときこそ、恩を売る絶好のチャンスです。
ただし、一つだけ注意点があります。絶対に「やってあげている」「家事をやるオレはよその旦那より偉い」という上から目線の空気感を匂わせないこと。微力ながら手伝わせていただいているという低姿勢が大事なのです。
料理でも洗濯でも君ほどうまくはできないけれど、という気持ちで行うのが大切です。なんなら、この魔法のワードをそのまま奥さんに言ってから、精いっぱい家事に励んでみてください。おいしい料理が作れなくとも、相方の反応がぐっとよくなることは間違いなしです。
世の妻のみなさんにもお願いがあります。自分のやり方と違う、後でやり直しが面倒だからといって、夫の慣れない家事に文句を言うのはやめてくださいね。せっかくタダで使える家庭内労働力を無駄に放棄することになる。
男たちは不器用で家事には暗いという前提を受けいれ、うまくほめて育てていきましょう。ペットのワンちゃんだって、何度も教えれば芸を覚えます。夫たちは確かに小型犬よりかわいげがないし、芸の覚えも悪いのは確かですが、辛抱強く教育すれば、皿洗いや洗濯物の畳み方くらいは、覚えてくれるものです。
男というのは偉そうにしているけれど、気の弱い繊細な生きもの。定年後の2人だけの生活の平和のためにも、うまく夫を褒(ほ)め、育ててくださいね。さて、僕も皿洗いをさせてもらいにいこうかな。
[NIKKEIプラス1 2020年12月12日付]
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