妻の箸の持ち方がイヤ脚本家、中園ミホさん

なかぞの・みほ 脚本家。東京都生まれ。テレビドラマ「やまとなでしこ」「Doctor-X 外科医・大門未知子」「花子とアン」「西郷どん」「七人の秘書」などを手掛ける。
なかぞの・みほ 脚本家。東京都生まれ。テレビドラマ「やまとなでしこ」「Doctor-X 外科医・大門未知子」「花子とアン」「西郷どん」「七人の秘書」などを手掛ける。

妻の箸(はし)の持ち方が気になって仕方ありません。珍妙な様子を見ていると食欲が半減しますし、すし店や来客時の食事では何だか恥ずかしい思いもします。「直してみたら」と勧めましたが、長年の習慣になってしまっていて、まったくその気がないようです。(奈良県・40代・男性)

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人の癖はたいしたことないようで、気になりだすとストレスになりますよね。その最たるものが箸の持ち方だと思います。

私が5歳くらいのとき。父親が厳しくて、箸の持ち方が変だという理由で、家族と同じ食卓に座らせてもらえませんでした。一人だけ別の小さな食卓で、とても悲しかった。練習して意気揚々と座ろうとしても、まだおかしいと「島流し」に遭う。

おかげで今は一応正しい持ち方をしていますが、逆に人の持ち方が気になるようになりました。若いころに男性とデートして、相手が変な持ち方をしていたら嫌いになったり、この人とはもう一緒に食べたくないと思ったり。そういう心の狭い自分もすごく嫌で……。だから、ご主人の悩みはよく分かります。

一方で、奥さまのご苦労もお察しします。30年近く今の持ち方を続けてきたわけで、これから直すのはとても大変なはずです。不思議なもので、箸の持ち方が気になりだすと、食事の味まで分からなくなります。奥さまの場合、今のご主人以上だと思います。

ひとつ申し上げておきたいのは、箸の持ち方でその人の値打ちが決まるわけではないということです。

ひどい箸の持ち方をしている俳優さんがいて、名門のご出身だったので、なぜ直さなかったか、それとなく聞いてみたことがあります。「母の愛情が深くて、あなたはあなたのままでと言われて育った。自分でも納得しているから、直さなくていいと思っている」と堂々とおっしゃるのを聞いて、すてきだなと思いました。

奥さまは、どうだったのでしょうか。ご両親もそういう持ち方だったのか、あるいは忙しくて教えるひまがなかったのか。そういうことまで知れば、変な持ち方も含めて、奥さまのことを好きになれるかもしれません。

でも今気になっているのだから、この先はもっと気になるかもしれない。それなら、奥さまにお願いしてみてはどうでしょう。絶対に傷つけないようにユーモアを交えて! 「そんな小さなことにこだわる自分が情けない」ということも言い添えてください。直ったときには、奥さまが欲しがっていたものを何でも買ってあげてください。

[NIKKEIプラス1 2020年12月5日付]


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